――編集者同士の横の繋がりにはどういったものがあったのでしょうか

 週刊少年ジャンプでは3,4人の編集者で班に分けて、4週間ぐらいかけて漫画連載以外の誌面を作っていく体制を取っています。この班という結びつきが重く見られていて、班のメンバー同士で毎日一緒にお昼を食べに行ったりとか、お酒を飲みに行ったりする風潮がありました。そこで、別の班の噂話を聞かされたりするのが僕はイヤで仕方がなくてね。同じ編集部内なのに、班を越えて同僚と親しくするだけでも、自分の班のメンバーからは白い目で見られる感じでした。

――組織の縦割りが徹底されているんですね

 社内の人間関係が編集部内どころか、班のなかで大部分が完結してしまっているわけです。さらにジャンプ編集部では中途採用はおろか、社内の別の部署からも人が移ってくることがほとんどありません。つまり、新卒で配属されてずっとメンバーが同じというわけです。同じ会社内でも、他の雑誌の編集部がどうなっているのかもよくわからなかった。

――確かにそれは閉鎖的かもしれません

 だから、編集部内の人とは努めて交わらないようにしていましたよ(笑)。僕が担当をしていた鳥山明さんの「Dr.スランプ」がヒットし始めた頃、同じ集英社の週刊プレイボーイから僕に「Dr.スランプ」について取材したいという話がありました。この時のライターがさくまあきらさん。後に「桃太郎電鉄」を世に出します。僕はさくまさんと親しくなり、その繋がりからドラクエの堀井雄二さんとも知り合うわけですが、僕はこうした社外のライターを積極的に誌面に起用しました。こうして誕生したのが「ジャンプ放送局」といった読者投稿コーナーや、ゲーム紹介記事「ファミコン神拳」です。当初、社外の人間を使うことに、同僚からものすごく反発されました。「アンケートが外に漏れるからダメだ」って。結局、作業は会議室でやる、編集部内には入れないという条件で企画は通しました。アンケートで高評価をとっていくことで文句を言う人はいなくなりましたが、それでも「漫画だけやっていればいいのに、エネルギーのムダだ。バカなことやってる」という陰口は聞こえてきましたね。

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653万部という部数はもう戻らないと思っていた