私が、幼少期におススメしたい習い事は、断然「そろばん」です。夫が小さい頃に習っていたのですが、受験のときの有利すぎる話を聞いて「なにそれズルい!」と悔しく思いました。彼は、数学や科学系の教科にある数桁の足し算なんかはもちろん、2桁×2桁の掛け算も、紙に書かずに頭の中で計算できました。しかも、とにかく計算スピードが速い。私は非常に計算が苦手で、遅いうえにミスも多くて、問題集を早く進めるために計算機を使って解いていたほどだったので、「私もそろばんを習っておけばよかった!」と後悔しています。彼曰く「そろばんを習っている人は頭の中でそろばんが浮かんでくるようになる」とのこと。それに、受験や勉強だけではなく、日常生活の計算にも一生役立つわけですから、非常にお得な習い事だと言えます。

 そろばんをはじくように、指を器用に動かす能力を「巧緻性」と呼びます。指を上手に動かすことは、脳を発達させると言われています。そして、神経系は、3歳から4歳あたりが最も発達しやすい時期だと言われています。有名小学校のお受験の世界では、線を書いたり、紙をちぎったりするのを見て、手先の器用さから将来性を判断するそうです。認知症だった祖母も、指を動かすためによく施設で折り紙をやっていました。指を使って玉をパチパチと動かしながら頭も使うそろばんは、脳神経を刺激するのにピッタリです。

 思い出してみると、東大医学部には「小さいころからずっとピアノを習っていました」という学生が何人もいました。当時は「なんでもできて嫌みな人達だな」なんて思いましたが、考えてみれば左右で異なる指を一本一本素早く適切な場所に置いていくピアノは、「巧緻性」を高める練習としてふさわしい習い事です。かくいう私も、実はピアノを習っていました……。まあ、小学生で2年もやらないくらいで早々にやめちゃいましたが。

 手は、意外に自分の思い通りに動かないものです。たとえば、1本のまっすぐな線を30センチくらい引いてみてください。定規がなければ、どこかでふにゃふにゃ曲がって、ビシッと綺麗には引けないはずです。でも、聞くところによれば、設計士さんなんかは定規がなくとも美しい線を引けるそうです。練習次第で、手の動きと脳の動きを一致させられるようになってくるとのこと。


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