DeNA・パットン (c)朝日新聞社
DeNA・パットン (c)朝日新聞社

 2017年もさまざまな出来事があったプロ野球。華々しいニュースの陰でクスッと笑えるニュースもたくさんあった。「プロ野球B級ニュース事件簿」シリーズ(日刊スポーツ出版)の著者であるライターの久保田龍雄氏に2017年シーズンの“B級ニュース”を振り返ってもらった。今回は「レアな記録編」である。

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 投手が打者を三振に打ち取るには、最低でも何球必要か?

 こんなクイズを出したら、おそらく10人中10人までが「3球」と答えるだろう。もちろん、通常のケースなら、これで正解だ。ところが、4月4日の巨人vsDeNA(横浜)で、1球奪三振という珍記録が生まれるのだから、本当に野球は奥が深い。

 レアな記録で鮮やかにB級ニュースデビューを飾ったのは、2017年にDeNA入りし、4月1日のヤクルト戦(神宮)で来日初登板をはたしたばかりの185センチ右腕・パットン。

 1対1で迎えた7回表2死一塁、打者・小林誠司を1-2と追い込んだ先発・今永昇太が4球目をファウルさせた際に左足を痛めて降板したのが、ことの発端だった。

 思いがけずカウント途中から緊急登板することになったパットンは、慌てず騒がず、143キロの高めストレートを投じ、小林をわずか1球で空振り三振。見事代役をはたした。

 野球規則によれば、打席の途中に投手が交代し、三振に打ち取った場合、どの投手に奪三振が記録されるか、カウントごとに細かく決められている。カウント1-2の場合は、野球規則10.16(h)の(3)に「その打者およびその打者の行為はすべて救援投手の責任とする」と定められているので、結果的にパットンは投球数1で奪三振が記録された。

 90年以降では、08年8月18日の西武・岩崎哲也以来2人目の珍事である。以来、“1球奪三振のパットン”と名を売った助っ人右腕は、その後、抑えも任されるなど62試合に登板。27ホールド、7セーブと結果を出し、チームの日本シリーズ進出に大きく貢献した。

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久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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