王者か、下克上か――。きょう28日から始まる通算68回目のプロ野球日本シリーズ。「ソフトバンク対DeNA」となった2017年“頂上決戦”の注目のポイントを挙げ、勝負の行方を占いたい。

 圧倒的な戦力でレギュラーシーズンを制し、迎えたCSでも勢いに乗る楽天を力でねじ伏せたソフトバンクと、巨人との熾烈な3位争いを制した後、CSで2位・阪神、1位・広島を撃破して“下克上”で勝ち上がってきたDeNAの対決。今季の戦いぶり、選手の経験値、日本シリーズにおける両球団の歴史(ソフトバンクが2年ぶり17回目の出場、DeNAは19年ぶり3回目の出場)を比べても、ソフトバンクが上。その“王者”に対し、DeNAが“勢い”を持って立ち向かう形になる。

ソフトバンクの工藤監督とDeNAのラミレス監督 (c)朝日新聞社
ソフトバンクの工藤監督とDeNAのラミレス監督 (c)朝日新聞社

 勝負においての一つ目のポイントは、ソフトバンクの豊富な投手陣から、DeNA打線がいかに早い段階で得点を奪えるかにある。ソフトバンクの先発陣は、東浜巨(今季16勝5敗、防御率2.64)、千賀滉大(同13勝4敗、防御率2.64)、和田毅(同4勝0敗、防御率2.49)、バンデンハーク(同13勝7敗、防御率3.24)、武田翔太(同6勝4敗、防御率3.68)と、質、量ともに万全の陣容が揃う。彼らが6回まで投げれば、7回以降は経験豊富な中継ぎ陣、そして最後にはプロ野球最多セーブ記録を更新し、CSでも圧倒的な存在感を見せた守護神・サファテが控える。9回はほぼノーチャンス。DeNAとしては、継投に移る前の6回までリードを奪うかことが必要になる。

 二つ目は、ラミレスの“神采配”が日本シリーズでも威力を発揮するかどうか。先発陣の顔触れは、今永昇太(今季11勝7敗、防御率2.98)、ウィーランド(同10勝2敗、防御2.98)、井納翔一(同6勝10敗、防御率3.84)、石田健大(同6勝6敗、防御率3.40)、濱口遥大(同10勝6敗、防御率3.57)となるが、CSでは早め早めの継投で、今永をリリーフ登板させるスクランブル体制も敷いて試合の主導権を握った。先手を打ったラミレス監督の決断がチームを勢いに乗せたのだ。たが、その決断を後押しした豊富なデータが、対戦数の少ないソフトバンク相手にはない。台風の影響で24日までCSが行われたことで、データ収集にかける時間も限られている。中3日で日本シリーズを迎えることで、CSで酷使した投手陣の疲労も抜けきらないだろう。CSの勢いをそのまま持ち込めるという点ではプラスだろうが、この休養日の少なさが、ラミレス采配を狂わせ、DeNAの致命傷になるかも知れない。

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