中村を捕手として考えたなら、1位候補に右打者の適任者はいない。そうなってくると、1位指名は投手にならざるを得ないだろう。

 楽天の投手陣は先発左腕、先発右腕はともに充実。中継ぎも枚数はいる。松井裕樹を将来的にどの位置で起用するかにもよるが、クローザー候補は念頭においたほうがいいだろう。

 そこで名前が挙がってくるのが、先発もクローザーもできる鈴木博志(ヤマハ)だ。
重みのあるストレートとカットボール。社会人では多くをクローザーとして過ごしてきたが、先発の適性もある。高校からの社会人入りで年齢的にもまだ若く、将来性もにらむことができる。右打者が補強ポイントだが、1位は投手指名にしておいて、2位以下で野手を狙うのも得策だろう。

 同じ社会人の右腕・西村天裕(NTT東日本)は最速154キロのストレートが武器だ。クローザータイプとして候補になる。帝京大時代は青柳晃洋(阪神)の控えで、けがもあった。彼の経験不足をどう見るかで評価が分かれるだろう。

 ただ楽天の場合、今年のルーキー・森原康平の例がある。遅咲きだった森原はプロ入りで一気に才能が開花した。鈴木はおそらく重複するので、外れ1位候補として西村も選択肢に入ってくるだろう。彼のポテンシャルを引き出せる土壌が楽天にはある。

 また、右打者として候補に残しておきたいのは増田珠(横浜)だ。

 広角に長打が打てる打撃センスは、神奈川大会史上初の4試合連続弾が証明している。U-18ベースボールワールドカップでは木製バットに苦慮したが、それは2年前のオコエも同じだった。プロの練習でそれはクリア可能といえるだろう。

 増田の実力では1、2位指名は評価が高いと言われるが、将来性のある右打者がそう多くいるわけではない。さらに外野手で右バッターというのはそう多く望めない。早い段階での増田指名を視野に入れるべきだろう。(文・氏原英明)

<楽天が狙うべき選手の優先順位>

中村奨成(広陵)
鈴木博志(ヤマハ)
西村天裕(NTT東日本)
増田珠(横浜)

●プロフィール
氏原英明
1977年、サンパウロ生まれ奈良育ち。地方新聞社勤務を経て、03年からフリーライター。夏の甲子園は03年から大会をすべて観戦取材するなど、アマチュア野球に精通。現在のプロ野球選手のアマチュア時代を知る強さを生かし、プロの現場でも成長ぶりを追いかける。一方、最近では個性がどう生かされているかをプロアマを問わず観戦の主眼に置いている。