裁判傍聴――。

 的はずれな片思い、幸せをつかむ手法が行き過ぎた風俗嬢、ドロドロ不倫の後遺症……。「事実は小説より奇なり」ということわざ通り、どんな小説やテレビ番組よりもドラマチックで破天荒な展開を見られるのが、裁判だ。裁判傍聴記の第一人者・北尾トロさんが恋愛裁判だけを集めて発売した『恋の法廷式』(朝日文庫)でも、さまざまな「事件」を垣間見ることができる。今回はその中から、「爆女」たちの優良風俗店にまつわる裁判を抜粋でお届けする。

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 開廷表を見ていたら、被告人の氏名が3人分書かれた売春防止法違反の事件が目についた。被告人名はすべて女性。罪を認め、争いがないので、まとめて審理するのか。法廷に行くと、開廷30分前から人の列。顔なじみの傍聴マニアからは「北尾さんも好きだね」と声をかけられた。

 妙に盛り上がっている理由は法廷に入るとすぐわかった。すでに着席していた被告人たちの存在感が半端じゃない……わかりにくい言い方だな。3人合わせて300キロ超(推定)の太った女たちなのだ。これはいかなる事件なのか。

 検察官が読み上げた起訴状によれば、3人は派遣型風俗店(デリヘル)「爆乳・爆尻○○○」の経営者(A)、店長(B)、電話番(C)。同店に所属する女性を不特定多数の男性に紹介し、売春させた疑いで捕まったらしい。3人は同種の風俗店で働いた経験があり、Bは店長兼売春婦でもあったという。客の評判も良く、売り上げの詳細は述べられなかったが、堅実な利益を上げていたようだ。

 被告人席でうつむく3人は、保釈中の身。黒ずくめの服装も手伝い地味な佇まいで、売春をしそうにも、それが似合いそうにも思えない……というのはぼくの印象にすぎない。

 人の好みはさまざまで、極端に太った女性を好む男が世の中にはそれなりにいるのだ。先日も、太ったAV女優を売春クラブに紹介した罪で、制作会社社員が捕まった事件があり、風俗産業の一形態として、一定の需要があると考えられる。

 どこが魅力なのか。爆乳・爆尻のキャッチフレーズに答えが隠されていると思う。胸が大きかったり、お尻がバーンとしてセクシーな女性を表すとき、よく使われる漢字は「巨」である。巨乳や巨尻は単にパーツが立派というだけでなく、ウエストのくびれがあることが前提となった言葉。「巨」の看板を掲げるためにはメリハリのあるボディが必須となる。

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