所属女性たちにとっても、収入が確保できて人間関係のトラブルがない居場所は貴重だ。全員「爆」だけに、おいそれと他の風俗店に流れることもない。長く働きたいから客への対応も良くなり、それがリピーター客を増やし、好循環が生まれる。

 この店では収入の約半分を広告宣伝費に費やしていた。家賃を支払い、残りの大半を女性のギャラに充てていたら、経営者は搾取どころじゃない。カラダを売らざるを得ない状況に追い込まれた「爆」にはそれぞれ事情がある。姉御肌のAは、いま以上に堕ちていくことだけはないよう、BやCの力を借りて女性たちを守ろうとしていた。

「うちで稼ぎ、貯金して、いずれ自立していけるよう応援できれば。そういう気持ちで経営していました」

 もちろん管理売春は悪いことだが、一刀両断する気になれないのは、彼女たちから素朴な人の良さが伝わってくるからだ。

 管理売春は法に反するが、自ら経営者になることで働く女たちを暴力団組織から守ろうとした被告人Aの動機と、好待遇で自立を支援しようとする方針からは、さまざまな事情で働く風俗嬢たちへの愛が感じられた。

 Aの店は優良店だった。その人柄と良心的なシステムのおかげで粒ぞろいの「爆女」が集まってしまい、自立どころか仕事が長続きしてしまうのは皮肉な話だが、所属する女たちはその気があれば貯蓄もでき、借金を返したり独立を図ったりすることも可能だっただろう。法律の範囲内でのサービスを徹底させていたら、より大きな事業になったかもしれない。

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 被告人質問でもいっさい言い訳せず、お互いに罪をなすりつけあることのなかったA、B、C。さらには、それぞれの関係者が証言台に立ち、愛ある証言を連発したことで、傍聴人たちの空気は変わっていく。

 裁判を傍聴していた北尾さんも最後に、「この裁判、土俵際だったのは被告人だけじゃなかった。証人たちにとっても人生の勝負どころで、ここで本音を伝えずどうするとう場面が作り上げられた。しかもAからB、さらにCに証人へと、連鎖反応を起こしたようにテンションが高まる流れは作ろうとしてできるものじゃなく、下ネタへの期待でやってきた傍聴人たちを静かにさせる力を持っていた」と、感想を述べている。果たして判決は……。

 かように不思議な力をもった裁判傍聴の世界。ぜひ覗いてみてほしい。