名画の登場人物のコスプレができる、人気のアートコスプレ・フェス。「皇帝ユスティニアヌスと随臣たち」の前で、東ローマ皇帝、ユスティニアヌスと皇妃テオドラの衣装でパチリ
名画の登場人物のコスプレができる、人気のアートコスプレ・フェス。「皇帝ユスティニアヌスと随臣たち」の前で、東ローマ皇帝、ユスティニアヌスと皇妃テオドラの衣装でパチリ
美術館の地下3階には、フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」に変身できるターバンとイヤリングが用意されている
美術館の地下3階には、フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」に変身できるターバンとイヤリングが用意されている
「ムンク阿波和三盆糖」(左)や「ムンク紅白ミニタオル」など、オリジナルのお土産も好評だ
「ムンク阿波和三盆糖」(左)や「ムンク紅白ミニタオル」など、オリジナルのお土産も好評だ
美術館内に展示されている作品はすべて原寸大。エル・グレコの「祭壇衝立画」6点は、現在はスペインに5枚、ルーマニアに1枚と分かれて所蔵されているが、同館では一堂に見ることができる
美術館内に展示されている作品はすべて原寸大。エル・グレコの「祭壇衝立画」6点は、現在はスペインに5枚、ルーマニアに1枚と分かれて所蔵されているが、同館では一堂に見ることができる
レオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」は、修復前と修復後の作品を向かい合わせに展示しており、修復の成果を見比べることができる。写真は修復前のもの
レオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」は、修復前と修復後の作品を向かい合わせに展示しており、修復の成果を見比べることができる。写真は修復前のもの

「これ、どうやって着るのかな?」「こういうポーズどう?」

【まるで美術の教科書の中? 大塚国際美術館の魅力】

 イタリアのサン・ヴィターレ聖堂にある壁画「皇帝ユスティニアヌスと随臣たち」を再現した作品の前で、楽しそうに写真撮影をしているのは、名古屋市から訪れた女子大生3人だ。それぞれ名画に描かれた中世東ローマ帝国の皇帝ユスティニアヌスと、皇妃テオドラがまとっている衣装を着て、さっそうとポーズを決める。

 夏休みに中国・四国地方を回ろうと調べていたところ、大塚国際美術館(徳島県鳴門市)で開催中のイベント「#アートコスプレ・フェス」のことを知った。同美術館は、25カ国の西洋名画1000余点を陶板で再現し展示。イベントでは、館内に展示されている古代から現代までの著名な15作品に登場する人物の衣装35着(大人用、子ども用)を、実際に着てみることができるのだ。

「(アートコスプレのことを)ネットで見て、来るのが楽しみでした。来たばっかりですので、どんどんギアを上げていきます!」 女子大生の1人が、笑顔で話した。

 同館の地下3階に用意されているのは、オランダの画家、フェルメールの有名な絵「真珠の耳飾りの少女」に登場する少女が身に付けている、黄色と青色のターバンだ。頭にターバンをかぶり、一緒に置かれている耳飾りをつけて、そばにある額縁から顔をのぞかせれば、気分はもう「真珠の耳飾りの少女」。比較的手軽に変身できるため、来館者が次々とチャレンジしていた。

 静岡市内から友人と訪れた60代の女性も、ターバンを着けてスマートフォンで撮影。額縁の中でポーズを決め、「まさかコスプレができるとは思いませんでした」と照れ笑いする。同美術館の担当者によると、「真珠の耳飾りの少女」のターバンは、以前から置いてあり、人気だという。

 イベントでは他に、古代ローマの剣闘士や古代ギリシャの哲学者であるプラトンやアリストテレス、スペイン・ハプスブルク家のマルガリータ王女、ピカソ作の肖像画「窓辺に座る女」などのコスプレもできる。豪華なドレスや時代を感じさせる衣装は、ほとんどを京都造形芸術大学の学生たちが手がけた。服の上から、簡単に着られる構造だ。

 大塚国際美術館は、大塚製薬をはじめとする大塚グループの創立75周年記念事業として、1998年、創業者の故大塚武三郎の地元である鳴門市に設立された。美術館の延べ床面積は、なんと3万平方メートル弱。展示スペースは地下3階から地上2階までで、順路通りに鑑賞したとしても、約4キロあるという。

 館内には、モネやレオナルド・ダ・ヴィンチ、ゴッホ、シャガール、ピカソといった時代ごと、だまし絵や食卓の情景などテーマごとに作品が並ぶ。原画の大きさだけでなく、色や質感、はく落やひび割れまでを再現した作品は、どれも見ごたえ十分。見ていると、教科書や画集の中を歩いている気分になる。

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