今回、選手陣容を一新しないのは、招集時期が限られる代表における継続性と成熟度を失うリスクを避けたい理由もあるかもしれない。唯一の初招集となった車屋については「(川崎で)ここ最近調子が良く、機会を与えるに値する内容を見せている」という監督の評価がある。さらにハリルホジッチ監督は、探していた“左利きの左サイドバック”を予選期間中に組み込めなかったため、本大会までの期間を見据えての最優先事項と考えているのかもしれない。

 先に挙げた招集外の選手の中で、本田については長谷部や岡崎とやや事情が異なる。「現時点のコンディションでは代表ではプレーできないと思う」とハリルホジッチ監督は評価しており、新天地のメキシコで出場時間を増やし、コンディションを上げることが代表復帰の条件となる。

 現状クラブでポジションを獲得できていない香川真司(ドルトムント/ドイツ)、酒井高徳(ハンブルガーSV/ドイツ)、原口元気(ヘルタ/ドイツ)らについては、直接コンディションをチェックし、本人たちとディスカッションをしたい意向もあるようだ。

 ニュージーランドとハイチは世界的な強豪とはいえないが、それぞれ身体的な特徴がはっきりしており、特にハリルホジッチ監督が重視する“デュエル”(1対1)ではアジアと違った勝負を強いられるだろう。そうした相手に対し、代表経験の浅いメンバーを組み込んだチームがどこまでゲームの主導権を握り、得点に結び付けられるのか。そして自分たちのゴールを守り抜けるのか。

「2試合とも違ったメンバーで戦うことになると思う。それぞれの選手にチャンスをつかんでほしい。不運なことに、それぞれの選手に10回ずつチャンスを与えることはできない。選手同士の競争をより激しいものにしてほしい」

 そう主張するハリルホジッチ監督の起用に応え、まずは11月の欧州遠征メンバーに名乗りを上げる選手は誰か。ホームで勝利を目指す試合の中で、チャンスを与えられた選手たちのパフォーマンスに注目したい。(文・河治良幸)