2、3人のディフェンスにかこまれても小さなギャップに入り込み、シュートに持ち込むこともできる。大枠で言えば香川に似た“10番タイプ”に類するが、またひと味違ったリズムと動きでアクセントを加える存在になりうる。欧州の中でも激しい傾向のあるポルトガルで揉まれ、フィジカル面の成長も興味深い。現在クラブでは主に[4‐1‐4‐1]の左サイドを担うが、代表では中央でテストする方が面白いかもしれない。

 一方、武富を推す理由はプレーの意外性だ。中盤を基本ポジションとする選手だが“神出鬼没”という表現がこれほど合う選手もなかなかいない。ポゼッションからでもカウンターからでもタイミングよくバイタルエリアに進入し、刹那の時間で高度な技術を発揮する。大きくはないがヘディングも得意としており、例えば[4‐3‐3]で、そのままゴール前の決定力を加えたい状況などで有効な選手だ。サイドやボランチ、[4‐2‐3‐1]のトップ下もこなせるが、[4‐3‐3]のインサイドハーフは彼の“ファジー”な特徴を最も生かしやすいシステムと言える。

 武富の所属する柏には伊東純也という代表入りを嘱望される快足サイドアタッカーがいて、彼も有力候補であることに間違いない。ただ、サイドは海外組のタレントがひしめく最激戦区であり、代表では武富より厳しい状況を強いられるかもしれない。

 ただ、久保裕也や浅野拓磨などスピードがある選手たちも、純然たる右のサイドアタッカーではなく、伊東は彼らとタイプが異なる。本田圭佑は言わずもがな、だ。カウンターでワイドのスペースを生かすことができ、1対1でも縦に勝負できる伊東は明確なオプションとして組み込みやすいことも確かだろう。

 もうひとつ、“ハリルジャパン”に不足しているのがセットプレーのキッカーではないか。通常は、香川や本田がキッカーをつとめ、最近の最終予選では井手口も任されたが、過去には中村俊輔や遠藤保仁といったスペシャリストがつとめたセットプレーが強みになりえていない点は本大会に向けた不安要素になる。

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