西武の機動力野球を支える秋山 (c)朝日新聞社
西武の機動力野球を支える秋山 (c)朝日新聞社

 パ・リーグ2位につける西武の得点力が際立っている。リーグ優勝を果たしたソフトバンクより40点以上多い652得点をたたき出しているのだ。昨季は143試合で619点だったから、すでに昨季を上回っている。今季は何が違うのか。

 ポイントは12球団トップの盗塁数とその数字の奥にある“したたかな野球”だ。

 昨季の西武は盗塁王のタイトルを獲得した金子侑司の存在はあったが、チーム全体で97個の盗塁(リーグ4位)しかカウントできなかった。それも金子侑が53盗塁を決めていたから、一人の力に頼っての数字といえた。それが今季は現時点でチームナンバー1の源田壮亮の35盗塁に始まり、金子侑の21、外崎修汰の19、秋山翔吾の15など、116盗塁をマークしている。

 本来、西武の走力は昨季からチーム内での課題だった。

 昨季の開幕前は「ライオンズは打って勝つしかない」と不安を口にしていた捕手の炭谷銀仁朗がこう語る。

「昔から言われていたのが、ホームランを打つ選手が3人、なんでもできる選手が3人、走れる選手が3人。それぞれいたら強い打線になるということでした。今季のライオンズは打つだけじゃなくて、走れるようになってきているので、いろんな形の攻め方ができるようになっていると思います」

 昨秋、辻発彦新監督が就任してから常に言われてきたのは「打席内での心がけ」だ。ただ打つのではなく走者との相互理解をいかにうまく使うかだ。

 炭谷は続ける。

「今年は盗塁ができる選手が多くなりましたよね。そこで、ただ盗塁ができるというのではなくて、打席内でどう考えるかを意識するようになりました。例えば、僕が試合に出るときは、外崎が7番で、僕が8番の時が多い。外崎には試合前、『塁に出たときはどうする?』と聞くんです。その日の相手投手のクイックが甘ければ、外崎は『初球から行く』と言ってくるので、僕は(盗塁を)待てますよね。そういう話をしていることがいい攻撃の仕方に繋がっていると思います」

 つまり、今季盗塁ができる選手が多いことに加えて、そのストロングポイントをいかにチーム全体で有効活用できるかということである。

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