思い込みをどれだけ捨てて、相手の言動をフラットに受け取るか。それができるようになると、不快なリアクションに直面しても、「違う価値観の人なのだな」「たまたまイライラしていたのかも」と考えられるようになります。

 でもやはりその場では痛いですよね。悪意のナイフを向けられたとき、どう対処すればいいのでしょう。

 いわれのないことであれば、何を言われても理解するスイッチはオフにします。「心にバリアを張る」という言葉はポジティブな意味で使われませんが、自分を守るためには「見えないバリア」を張っていいと思うのです。それは、相手の悪意を吸収しないための「防水加工」です。

「なんだ、君、こんなことも知らないのかね」

 と言われたら、

「すみません、そうなんです……。そんなことも知らなくて……」

 と、相手に言われたことをやわらかく受け止め、やわらかく返す。たとえるなら低反発枕のイメージでしょうか。

とりあえず聞いているように見せかけて、言いたいことはすべて言わせてしまいましょう。「何か言い返したい!」という気持ちも湧きますが、ここで反論すると、言葉尻を取られ、さらにネチネチと攻撃し続ける燃料を与えてしまいます。「お言葉ですが……」が通じる相手ではありません。感情的になって争ったらこちらの負け。相手の思うツボです。

 何も考えずに口にしてその瞬間に消えてしまう言葉でも、言われた側にとっては、ナイフで切りつけられたような痛みを感じる。でも、いつまでも痛がっているのも、癪(しゃく)ですよね。言ったほうはすっかり忘れているかもしれないのに、なんて割に合わないのだろう、と思ったのです。

 相手から浴びせられた悪意をまともに被らないための、心の防水加工。何を言われても、その場でやわらかく受け止め、水滴にして弾いてしまう。別れた後は、犬のようにブルブルっと身震いし、水滴を振り落としてキレイさっぱり。もちろん、本来パワハラ、モラハラなどは、断じて許されません。信頼できる誰かに相談するなど、別の角度から行動を起こす事も突破口になります。心ない言葉から自分を守る事ができるのも、他でもない自分。何もしないままストレスを溜めてしまうよりも、小さいステップからでも実践してみてください。