就活で内定が出ても「ママがダメだっていうんで」と断ってくる学生が後を絶たないため、企業が親に確認を取る「オヤカク」は定着しつつある。入社式に親が出席するため、保護者席が用意する企業さえある。しかも、小学校の入学式よろしく成人したわが子の写真を撮りまくる。

 なかには「少子化でわが子が可愛いんだろうし、仕方ないんじゃない?」と感じる方もいるかもしれないが、国際的にも過保護・過干渉は問題視されている。米国では親がヘリコプターのように空中から子どもを監視する「ヘリコプター・ペアレンツ」、北欧では、子どもの人生の障害をその都度親が取り払うように誘導する親を「カーリング・ペアレンツ」と呼ぶ。

 では、過保護・過干渉がなぜいけないのだろうか。

 主宰する子育て科学アクシス(千葉県流山市)で親子の相談を受け、脳医科学の知見もある医師の成田奈緒子さんによると、自立できないうえに、コミュニケーション能力などをつかさどる前頭葉の発達に影響を及ぼすという。

「親が先回りして道を示してしまうと、頭の中で問題・課題の解決策を考える前頭葉が育ちません。前頭葉は大脳皮質にちらばっている記憶や情報を集約及び取捨選択して、そのシチュエーションに応じて自分で行動を選びとる場所です。ところが、自分で何かを経験したという実感が乏しく、あってもその情報を使うことがなく毎回解決策を示されると、考える作業をスキップしてしまう。過保護な親のもとでは、脳が鍛えられにくいと言えます」(成田さん)

 そういえば、ドラマの中でカホコが突然「私、こんなの初めて!」と叫び、ごくごく普遍的な感情(誰かを好き!という気持ちなど)に目覚めるシーンが毎回のように出てきた。これはある意味、彼女が成長過程で積むべき体験をいかに積んでいないか、つまり経験値が低いかを印象付けるフレーズだったのかもしれない。

 リアル・カホコは、前出のA子のように成人しても親の呪縛から逃れられない。第一志望の国立大学を落ちていた彼女自身、苦しんでもいた。

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