阪神甲子園駅 (c)朝日新聞社
阪神甲子園駅 (c)朝日新聞社
向谷実(むかいや・みのる)/1956年、東京都生まれ。77年に「カシオペア」のキーボーディストとしてデビュー。95年に世界初の実写版鉄道シミュレーションゲームを発売。鉄道各社に技術を評価され、運転士の教育用シミュレーターなども開発する
向谷実(むかいや・みのる)/1956年、東京都生まれ。77年に「カシオペア」のキーボーディストとしてデビュー。95年に世界初の実写版鉄道シミュレーションゲームを発売。鉄道各社に技術を評価され、運転士の教育用シミュレーターなども開発する

 夏の甲子園大会もいよいよ大詰めとなった。応援に行く人の中には、阪神電車に乗って球場を訪れる人も多い。実は甲子園駅では、春夏の甲子園の時期になると、各大会のテーマ曲をアレンジした列車接近音を流している。2015年から編曲を担当する向谷実さんがその制作秘話を明かす。

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 夏真っ盛りのはずですが、ぐずついた天気が続いています。しかし、甲子園では雨にも負けず、高校球児達が連日新たなドラマを生み出しています。

 最寄り駅である阪神電鉄・甲子園駅ではいま、期間限定で僕が編曲した列車接近音が流れています(夏の甲子園大会中のみ)。
 曲は、高橋優さんの新曲「虹」をアレンジしたものです。この曲は朝日放送さんのテレビ番組「熱闘甲子園」の、2017年夏のテーマソングになっています。

 2009年から阪神電鉄の全駅の発車メロディを作らせていただいているのですが、2015年の春の高校野球大会から、大会期間中限定で甲子園駅の列車接近音も手がけさせていただいています。春のセンバツでは大会行進曲を、夏の甲子園ではテーマソングを編曲する形で、かれこれ今回で6曲目になりました。

 発車メロディの時もそうですが、僕が鉄道の音楽を作曲する上で一つ、とても心がけている点があります。それはこれから電車に乗ろうとしている人達に向けて曲を終わらせたくないという点です。列車の乗り降りは人の行動の途中にあるわけですから、そこで流れる音楽は一部の例外を除き、曲を終止させないというのが僕のポリシーです。

 普段、阪神電鉄で使われている列車接近音は、「線路は続くよどこまでも」なのですが、この曲のイメージも踏襲しつつ、それぞれの大会のテーマソングだとわかるようにアレンジしていきます。そして「接近音」ですから電車が来るよという注意喚起の役割もなさねばなりません。こうした要素を踏まえながら、約10秒間という時間に落とし込まないといけません。

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向谷実

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向谷実(むかいや・みのる)/1956年、東京都生まれ。77年に「カシオペア」のキーボーディストとしてデビュー。95年に世界初の実写版鉄道シミュレーションゲームを発売。鉄道各社に技術を評価され、運転士の教育用シミュレーターなども開発する

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