これと同じように、コアメンバーが大所帯になることで、他の人が何とかしてくれるだろうという手抜きの心理が働き、責任感が分散されてしまいます。このような状態でテレワークによる生産性の向上を求めるのは難しいでしょう。テレワークの前に、責任感を向上させ、モチベーションを高める施策が必要です。

■テレワーク以前に考えるべきことがある

 労働人口が増えない今、生産性の向上が最も重要なことの一つです。生産性の向上とは、生産量を増やし、作業時間を短縮することです。別の言い方をすると、限られた時間で最大限の成果を出すために、当たり前のように続けてきた企業や国全体の制度を検証して、見直すべきものが見つかればすぐにでも見直すことです。つまり、過去のやり方を変えることに、もっと積極的にならなければいけない時期に来ているのです。これは、前例がなければ動けない日本人にとっては、とても大きな課題です。なぜなら、今まで労働人口が増え続け、市場が大きくなり、工夫しなくても消費者はモノを買ってくれた成功事例があるからです。

 これまでのように、ただ目の前の仕事をこなせばいい、上司からの監視付きで机に張り付いていれば評価される、そういう前提で評価された給与でいいという人は、近い将来にあなた自身を襲う重大な問題を見つけることもできなければ、問題自体が何なのか考えることもできません。

 今後は労働人口が減少する時代に突入します。市場も縮小します。国という境界線を越えて仕事をする機会はますます増えるでしょう。今すでに、国境を越えて仕事をしている人たちにとっては、テレワークという概念は当たり前のことになっています。なぜなら対面でのコミュニケーションを前提としないからです。いつでも対面でのコミュニケーションができる、という感覚を捨てきれずテレワークをしても意味は無いのです。1日を自由に裁量できる土台環境を従業員に与えることが先決です。

 今回のテレワーク・デイに参加した人たち、関心を寄せた人たちは、自分の働き方や職場にあるこれまで見えなかった問題点について一度立ち止まって考えるべきです。そして継続してテレワークを実践するべきです。より良いテレワークを見つけるにはやり続けるしかありません。自由裁量であるテレワークを導入する土台環境が揃えば、業務に集中できる時間が増え、個人の業務の生産性は向上するはずです。そして、AIが進化しつづける今、業種や職種に関係なく人間に求められる「クリエイティブ思考」が発揮されやすくなるでしょう。

 土台を固めるには、何が必要か、何を変えるべきか。それは、長く生き残っていく企業になるために、そして、AIを脅威に感じないビジネスパーソンとなるために、今すぐにでも考えなければならない喫緊の課題なのです。(寄稿・瀬戸和信)