待望久しい打てる捕手として最も注目される九州学院の村上宗隆(c)朝日新聞社
待望久しい打てる捕手として最も注目される九州学院の村上宗隆(c)朝日新聞社
攻守で期待値の高い福岡大大濠の古賀悠斗(c)朝日新聞社
攻守で期待値の高い福岡大大濠の古賀悠斗(c)朝日新聞社

 正捕手不在。侍ジャパンのトップチームでここ数年続いている状況だ。今年のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)では小林誠司(巨人)がラッキーボーイ的な活躍を見せたが、シーズンではとても日本の正捕手とは呼べない成績に終わっている。

 7月25日時点で規定打席に到達している捕手は、小林以外では中村悠平(ヤクルト)だけ。ちなみにこれは今年に始まったことではなく、過去3年間を見ても規定打席に到達した捕手は2016年1人、15年2人、14年1人と似たような状況が続いている。甲斐拓也(ソフトバンク)、田村龍弘(ロッテ)など楽しみな若手はいるが、捕手の“人材不足”がよく分かる数字と言えるだろう。

 しかし今年のドラフト候補の選手たちを見てみると、例年以上に捕手の好素材が多いことがよく分かる。特に高校生に将来性の高い選手がめじろ押しだ。まず待望久しい打てる捕手として最も注目されるのが村上宗隆(九州学院)だ。入学直後から4番を任せられると、1年夏の本大会の初打席で満塁ホームランの離れ業をやってのけた。確実性には少し課題が残るものの、大きな構えで打ち方に目立った欠点はなく、とらえた時の打球は間違いなく超高校級。スラッガーとしてのスケールは清宮幸太郎(早稲田実)、安田尚憲(履正社)にもひけをとらない。1年秋から捕手に転向したが、大柄ながらフットワークも悪くなく、スローイングのレベルも高い。将来的には阿部慎之助(巨人)を目指せる素材と言えるだろう。

 守備面でナンバーワンと評価されているのが中村奨成(広陵)だ。高校の先輩ということから、つけられた異名は“小林二世”。捕手としては少し細身だが、抜群のフットワークと低くて伸びるスローイングは圧巻だ。また捕手ながら俊足も持ち合わせ、11球団のスカウトが集結した広島大会2回戦では2盗塁をマークし、その脚力を見せつけた。この2人に関してはプロ志望なら上位指名の可能性も高いだろう。

 続く候補としては古賀悠斗(福岡大大濠)と篠原翔太(報徳学園)の名前が挙がる。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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