古賀は昨年夏までは内野手だったものの、それを感じさせない見事なスローイングが光る。体のサイズは決して大きくないが、プレーに力強さがあり、体を張ってボールを止められる姿勢が素晴らしい。バッティングもリストの強さが抜群で、昨秋の明治神宮大会、今春のセンバツでいずれも一発を放ち、その長打力を見せつけた。捕手としての経験が浅い分、今後の伸びしろが大きいというのも魅力だろう。

 篠原も旧チームではバッティングを買われて外野を任せられていたが、新チームでは不動の正捕手に定着。キャッチャーらしいたくましい体つきで、速くて正確なスローイングは高校生トップレベル。ホームランはそれほど多くないものの、右方向にも強く打てるバッティングが持ち味で、今春のセンバツでは4試合で打率5割をマークしている。近畿を代表する捕手と言えるだろう。

 大学生、社会人では松本直樹(西濃運輸)のスローイングが圧倒的だ。捕手のセカンド送球のタイム(捕手が捕球してから二塁手or遊撃手が捕球するまでのタイム)は、一般的に2.00秒を切れば強肩と言われているが、松本の場合は日常的に1.7秒台をマークする。これは現在プロで最も速いと言われている甲斐のタイムとほぼ同レベルであり、プロでもトップクラスと言えるものだ。立教大時代はリーグ戦で1本もヒットを打つことはできなかったが(13試合に出場して20打数0安打)、その強肩が認められて社会人では1年目からレギュラーを獲得。昨年の都市対抗でも一発を放つなど、課題だったバッティングにも磨きがかかっている。即戦力という意味ではナンバーワンであることは間違いないだろう。

 高卒3年目の若手捕手としては岸田行倫(大阪ガス)の注目度が高い。社会人で1年目の秋から正捕手を任せられており、レベルの高い投手陣をリードしてきた経験は魅力。ものすごい強肩というわけではないが、報徳学園時代の2年夏までは内野手だっただけにフットワークが良く、安定したコントロールで盗塁も阻止できる。他にも小畑尋規(立正大)、大平達樹(桜美林大)、辻野雄大(Honda)、川端晃希(JFE東日本)、細川勝平(王子)なども高いディフェンス力を誇っている。

 捕手は守備が第一と言われるが、今年の候補選手は高い打力を備えた選手も多く、村上や古賀はその筆頭格だ。ほかにも松本のような超のつく強肩捕手もおり、まさに多士済々という状況である。打てる捕手、シーズンを通して任せられる捕手を求めている球団は多いだけに、秋のドラフトに向けて彼らの注目度がさらに上がる可能性は高いだろう。(文・西尾典文)

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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