芸能界の中でも、お笑い芸人で薬物ってほぼいないんですよ。ここ20、30年だと芸人がシャブだ大麻だって聞いたことないでしょ。すごく昔には、芸人さんでも「ヒロポン」(メタンフェタミンの一般医薬品。戦時中に疲労回復などのために広く用いられ、戦後は乱用が問題になった)の乱用がありましたけど。

 なぜなら、芸人はオンとオフのスイッチがあるから。笑いを取ったときに、出るアドレナリンって薬物と一緒なんだと思うんですよ。それで逆にお笑い中毒になりますよ。

 それに脳が死んじゃうとお笑いはできない。わかりやすい例で言うと、お笑い芸人は酒飲んで舞台に上がらないんですよ。でも、バンドのライブとかでは酒飲んで舞台に上がったりするでしょ。それが違うところ。酔っぱらった脳で笑いなんか取れるもんじゃないですよね。違う振りが来たらどうしようかとか、もう一個のパターン用意しておこうとか、喋りながら別のことを考えたりするわけだから。薬物とかやっちゃうとお笑いは死んじゃうんですよね。脳が死んじゃうから。

 今回1番伝えたいのはね、薬物や葉っぱをやった芸能人の責任の取り方なんです。しばらく仕事を干されて、2、3年後に復帰した人もいっぱいいるじゃないですか。プロダクションの問題とか、タレントの考えとか、テレビ局側の判断とかあると思うけど、無かったことにしていないで、自分のことをテレビでちゃんと語りなさいってことなんですよ。薬をやるとこんな目にあいますよ、自分の場合はこんなことになったんですよと。身体は、仕事は、お金は、家族はこうなりましたよ、それだけ怖いんですよってちゃんと語らなきゃいけない。芸能でやった責任を取るっているのは、そういうことだと思うんですよ。俺見てみなよ、私見てみなよって。

 ダルクで取材してわかったことは「もうやめました」ってはっきり言っているやつは、やめてない。その言葉は嘘なんです。「やりたいけど、日々やめようと戦っています」というのが止める意思がある人なんですよね。田代さんは最初のころは嘘もついたので、なかなか辞められなかったそうです。おそらくいまはマスコミで唯一発言している人ですよね。ダルクの会長と全国各地を回って、薬物中毒者の前で講演を続けていますし。

 酒井さんは結局、事務所を移られたけど、僕のライブで覚せい剤をテーマにするときに、会いに行って一緒に写真撮らせてもらいました。その写真を使わせてもらったんだけど、酒井さんはライブを見に来てくださった。個室を用意しますかって聞いたら、一般席でお客さんと一緒に見ます、責任がありますからって。そのときに立派だなって思ったんですよ。

 芸能人の責任の取り方って、やっぱり人前に出て語ることなんですよね。

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カンニング竹山

カンニング竹山

カンニング竹山/1971年、福岡県生まれ。お笑い芸人。本名は竹山隆範(たけやま・たかのり)。2004年にお笑いコンビ「カンニング」として初めて全国放送のお笑い番組に出演。「キレ芸」でブレイクし、その後は役者としても活躍。現在はお笑いやバラエティー番組のほか、全国放送のワイドショーでも週3本のレギュラーを持つ。単独ライブ 「放送禁止2017」が9月21~24日、東京・品川の天王洲銀河劇場で開催(撮影/写真部・小原雄輝)

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