そのような苦労を経て、相手の本質的な美点に気付くと「なにもかも嫌い」という気持ちが薄れて「まあ、こういう長所もあるしな」と思うことができる。そうすると、感情をコントロールでき、嫌悪感が止めどなく膨らんでいくのを防ぐことができます。

 ただ、さまざまな努力をしても、どうしても本質的な長所が見つからない相手もいるかもしれません。でも、それでいいのです。相手をどうしても好きになれないのに、他の人と同じように親しくする必要はありません。どうしようもなく嫌いな相手を好きになることほど、難しいことはないでしょう。

 そういう場合、付き合いを断つことが最善の策ですが、それが無理なら相手との間に「壁」をつくっておくことです。壁をつくっておかないと、相手は勝手にずけずけとあなたの領域に入ってきてしまいます。

 基本的に「相手を必要以上に自分の領域へ入れない」という意志を持ってください。そのうえで、相手に不快なことをされた時に、相手が一瞬ハッとするような言葉を投げかけるようにします。これが壁をつくる第一歩です。

 たとえばパワハラ上司にひどい言葉を投げつけられたら、「その言葉、かなり胸に刺さりました」「今、すごく驚きました」などと、相手の言葉をどれだけ自分が「重く」受け止めているかを伝えるのです。

 ただし、否定的な言い方にならないように気を付けてください(否定してしまうと相手が攻撃してくる可能性があります)。

 そのような言葉を伝えると、相手の様子が変わると思います。無意識的に壁があることを感じるからです。パワハラ上司の言葉に対してあなたがまったく反応しなければ、エスカレートしていく可能性がありますから、なるべく早い段階で壁をつくりましょう。

 壁をつくるという意志を持っていないと、相手の言動に振り回されてしまいます。ついつい相手のペースに巻き込まれて、したくもない話をしたり長時間一緒に過ごす羽目になったりすることもあるでしょう。これでは、どんどんストレスが溜まってしまいます。

 でも「この人に何か言われたら、きちんと壁をつくろう」と決めていれば、何もかも相手に左右されることはなくなるということです。

 いったん設定した壁の高さが変わることもあります。相手を知るうちに、もう少し受け入れてもいいかなと感じることもあると思います。相手との関係は常に変っていくものなので、必要に応じて修正をしてください。

 一度適切な壁を設定したら、これ以上相手を嫌いになるということはありません。人間関係は最も厄介なストレス源と言われていますが、実はこのようにして自分でコントロールできるものなのです。