5月の連休明けと9月の夏休み明けには「行きしぶり」の相談がピークになるという。その予兆は……(※写真はイメージ)
5月の連休明けと9月の夏休み明けには「行きしぶり」の相談がピークになるという。その予兆は……(※写真はイメージ)
不登校新聞の石井志昂編集長
不登校新聞の石井志昂編集長

 5月の連休明けは、不登校に関わる者にとって忙しい時期です。「子どもが学校へ行きたがらない」という趣旨の相談が相次ぐからです。

 統計データはありませんが、5月の連休明けと9月の夏休み明けには「行きしぶり」の相談がピークに達する、ということは不登校に関わる者ならば誰でも感じています。私が編集長を務める『不登校新聞』で言えば、ゴールデンウイークが明けるとその直前や期間中に比べて4~5倍の相談のお電話をいただきます。「いま玄関で子どもがうずくまって動かない」という電話を受けたこともあります。

 なぜ今この時期なのか、理由は一つです。

 子どもは親が思っているずっと以前から学校でずっと苦しんできたからです。

 昨日、今日、起きたことだけで「行きしぶり」を始める人はいません。短くて1カ月、長くて数年、ずーっと学校で苦しんできて、自分ではコントロールができなくなってしまってから「行きしぶり」が始まります。

 ほとんどの親にとっては「突然」のことですが、子どもにとっては「当然の結果」なのです。そう言うと、ほとんどの親の方は「まさか」と口をそろえて言いますが、それは、お子さんの配慮のたまもの。学校での苦労を見せない努力をお子さんがしてきた証拠でしょう。

「学校が苦しい理由」はさまざまです。子ども同士のいじめがある場合も、教師からのいじめがある場合も、いじめに加わっていることが苦痛な場合も、勉強に疲れてしまった場合も、それらが全部重なっている場合もあります。このほかにもいろんな理由がありますが、私が取材してきたなかで一番多いのは、たくさんの理由が重なっていた場合です。

「学校が苦しい」というたくさんの理由を抱えた子どもは、連休中や夏休み中に気を休めることができます。そこで初めて「苦しかった自分」に気がつきます。苦しかった自分に気がつき、苦しみの理由が見えると、とたんに学校自体が怖くなります。

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石井志昂

石井志昂

石井志昂(いしい・しこう)/1982年、東京都町田市出身。中学校受験を機に学校生活があわなくなり、教員や校則、いじめなどを理由に中学2年生から不登校。同年、フリースクール「東京シューレ」へ入会。19歳からNPO法人全国不登校新聞社が発行する『不登校新聞』のスタッフとなり、2006年から編集長。これまで、不登校の子どもや若者、識者など400人以上に取材してきた

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