ビッグデータとは文字通り膨大な情報の集合体で、例えば商店で消費者がどんな組み合わせで品物を買ったか、検索エンジンでどんなキーワードが検索されたか、GPSによって計測される人やモノの移動履歴などがそれにあたる。

 Amazonで買い物をすると「この商品を買った人はこんな商品も買っています」と教えてくれるが、これは各消費者の購入履歴を分析することで可能になったサービスだ。Googleに間違った検索ワードを打ち込むと「もしかして……」と正しいワードを教えてくれるのも、過去の膨大な打ち間違いを分析した成果である。

 こうしたビッグデータの活用を大幅に後押しするのがIoTだ。IoTが鳴り物入りで登場したとき、その活用例としてスマホで外出先から家電を操作できたり、電力の消費量をスマホで確認できたりすることなどが紹介されたが、多くの人は「そんなものか」と失望に似た感慨を抱いたのではないだろうか。

実際のところ、IoTの本質は全く異なるところにある。それは車や家電など、身の回りの道具にセンサーを組み込むことによって、これまで計測できなかったデータが計測可能になることだ。そのデータを活用することで未踏のイノベーションが実現する。対物センサーとGPSを車に組み込むことで可能になった自動運転はその好例だろう。

 すなわち、いまやデータは「ヒト・モノ・カネ」と並び、企業にとって最も重要なリソースのひとつ。これを活用することがあらゆる領域のビジネスにとって前提となりつつあるわけだが、中林氏によると日本の現状は楽観視できるものではないという。

「ビッグデータという言葉がメディアに盛んに登場し、多くの企業が関心を向けるようになりました。しかし、データを事業にどのように役立てるか、ビジョンを持てないまま使っている企業が少なくありません。その背景にある要因のひとつがデータサイエンティストの不足であり、これが、我々がデータサイエンティストの育成に着手した動機です」

●データサイエンティストは将来25万人も不足する?

 データサイエンティストとはどんな人々なのか。中林氏は「その業務内容は極めて広範で、定義が難しいが」と断った上で、「レストランにおける料理人のような存在」と語る。

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