3月8日に「ジーズアカデミーTOKYO」で行われた記者会見の様子。SOMPOホールディングスの中林紀彦氏(左から3番目)と人材育成プログラムで講師を担当するデータサイエンティストの面々。募集要項は公式サイト「DATA SCIENCE BOOTCAMP」で確認できる
3月8日に「ジーズアカデミーTOKYO」で行われた記者会見の様子。SOMPOホールディングスの中林紀彦氏(左から3番目)と人材育成プログラムで講師を担当するデータサイエンティストの面々。募集要項は公式サイト「DATA SCIENCE BOOTCAMP」で確認できる

 数年前から頻繁に耳にするようになったビッグデータ解析やIoTといった言葉。メディアが喧伝し続けた結果、多くの人々がこうした技術によってもたらされる“明るい未来”のイメージを共有するに至った。目的地まで自動的に連れて行ってくれる運転者不在の車、食材が不足したら自動的に注文してくれる冷蔵庫、住人の嗜好(しこう)を把握して快適な環境を保ってくれる自動空調システム……まるでSFのような未来は確かに目前だ。

 だが、それを実現するために日本の企業が超えなければならないハードルの高さは、意外と共有されていない。“明るい未来”は、自動的には来ないのだ。

●日本の企業は何をするべきなのか

「既存のあらゆる産業が、デジタル化によって破壊される危機を迎えている。だからこそ、自ら先駆者を目指す。データサイエンティストを大至急育成し、事業内容をデジタル化時代に適合した形に転換していく」

 2017年3月8日、都内で行われた記者会見で、SOMPOホールディングス執行役員グループCDO・楢崎浩一氏はこう熱弁した。楢崎氏が語る「デジタル化」こそ、ビッグデータ解析やIoTなどをベースとしたビジネスの隆盛。こうした変化に対応するため、同社は同年4月より「DATA SCIENCE BOOTCAMP」と銘打った人材育成プログラムをスタートさせるという。ビッグデータ解析をビジネスに取り入れるために不可欠なデータサイエンティストを確保するためだ。

 こうした動向は何を意味するのか。今回、先述の育成プログラムを主導する同社のチーフ・データサイエンティストである中林紀彦氏に話を聞いた。かつて日本IBMでマーケティングマネジャーを務めた経歴を持ち、技術領域とビジネス領域の双方に精通する同氏の話からは、日本企業が直面する課題、そしてとるべき行動が浮かび上がる。

●ビッグデータを真の意味で活用できている日本企業はまだまだ少ない

 本題に入る前に、ビッグデータやIoTがどんなものであるのかを整理しておきたい。まず前提として、今世界は産業革命に比肩するほどの技術変革の波を迎えている。その原動力こそ、コンピューターの処理速度の向上によって可能となったビッグデータの解析だ。

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