2月10日、11日にバスケットボール男子日本代表(アカツキファイブ)のイラン戦が札幌市の「北海きたえーる」で行われた。筆者は10年前、正確には2006年の7月21日に同じカードを観戦したことがある。今とはバスケ界、代表チームを取り巻く環境が全く違った。
17年のイラン戦で活躍した竹内譲次(A東京)、公輔(栃木)の兄弟は、当時も代表の主力だった。折茂武彦、桜井良太(ともに北海道)、五十嵐圭(新潟)、伊藤俊亮(千葉)、柏木真介(三河)、佐藤託矢(京都)といった当時のメンバーの一部も、今季のB1で活躍している。
ただ06年の強化試合は翌月に日本で世界選手権を開かれるタイミングの開催だったにもかかわらず、越谷市立総合体育館というローカルな会場で開催された。駅から路線バスに20分以上揺られて会場に入ると、靴を脱ぐように促されて驚いた。当時のバスケット界では代表戦さえ、土足禁止の会場で開催されることがあった。お客さんも地元の中高生が多く、立派なアリーナに三千人以上を集めた17年のイラン戦とは雰囲気がかなり違った。05年11月にbjリーグが発足していたとはいえ、バスケ界がエンターテイメントやビジネスといった要素を欠いていた時代である。なお06年のイラン戦は日本が61-72で敗れた。
今回の連戦は11日が85-74の勝利、12日が68-73の敗戦で、1勝1敗だった。世界ランク48位の日本が、世界ランク25位のイランに善戦したともいえる。逆に若手中心で、主力を複数欠いていたイランに連勝したかったという見方もできるだろう。
ただこのイラン戦はあくまでも、今秋から始まる19年のワールドカップアジア予選に向けた強化試合。今後に向けて「種をまく/耕す」ための場だ。ルカ・パヴィチェヴィッチ暫定ヘッドコーチは15選手中12名にプレータイムを与え、様々な才能、組み合わせを試していた。その中でも昨年7月の五輪最終予選に参加していなかった富樫勇樹(23歳/千葉ジェッツ)、馬場雄大(21歳/筑波大)の活躍は明るい材料だ。
富樫は167㎝という体格ながら抜群のスピード感と得点力を持ち、田臥勇太に次ぐBリーグのスター。彼がセンターとの連携からシュートに持ち込む「ピック&ロール」の形を出せたことが11日の17得点につながり、逆に翌日はそこを修正したイランに7得点と封じられた。そういった駆け引きは今後への課題だが、日本のバスケ界では希少な「点を取れるポイントガード」として、パヴィチェヴィッチ暫定HCの期待が大きいことは伝わってきた。