リアル「ドクターX」の苦悩と現実 「女の心臓外科医はいらない」と言われ…

働く女性

2017/02/09 11:30

 普段、化粧は「する時間がないのではなく、単に面倒だから」という理由で、基本的にしない。美容院は年に4回(昔は半年に1度だった!)。ファッションには興味があるが、買いに行く暇がないので、親や周りが買いそろえたもの。食事も適当。どこでも眠れるので、「病院のスタッフのほとんどが、私の寝顔を知っています」と笑う。

 齢40。結婚や出産への気持ちを尋ねると、「私はこの仕事が好きで、突っ走ってきました。他の女性の医師がどうとかではなく、結婚や出産でキャリアが途絶えることはしたくないんです。それに、きっと結婚して子どもができたら、家事も育児もすべて自分でやりたいと思ってしまう。それはきっと無理なので、結婚はまだしも、出産については他の女性にお任せします」(同)

●患者さんへの思い入れは女性の心臓外科医の方が強い

 今回、病棟での撮影を承諾してくれた心不全で入院中の70代の男性は、「宮木先生は細かいところまで説明してくれて、不安をとってくれる。若いのに素晴らしい先生です」と話す。病室に行く間も、すれ違う患者一人ひとりの肩にそっと手を置き、声を掛ける。車イスの患者には、ひざを折って目線を合わせて会話する。それが彼女の日常だ。

「手術がどんなに順調にいっても、患者さんはやっぱり不安をぬぐえない。だからこそ、医師が近くにいて、不満に思うこと、心配なことを聞き出して、解決してあげないと。自分がどんなに疲れていても、眠くても、患者さんが不安に思っているのなら、行って話を聞いてあげるべきだと思っています」(同)

 そんな宮木医師について、前出・樋上医師は言う。

「何人かの女性の心臓外科医を知っていますが、患者さんへの思い入れは男性より強い気がします。なかでもその気持ちが強いのが宮木医師でしょう。何しろ他の医師が患者さんに非礼なことをしたり、約束を守らなかったりするのを見ると、真っ向からぶつかっていきますからね(笑)。自分のやりたいことよりも、患者さんを優先させている。これは性差ではなく、彼女のキャラクター、良さでしょうね」

 一流の心臓手術に求められるものは、『安全に、確実に治す』こと。あくまでも主役は患者だ。「一流と思える手術ができるようになるまではまだまだですが、やりたいと思うことは絶対に曲げたくないですね。もし心臓外科医を目指す女性がいたら、こうアドバイスしたい。『好きでやりたいと思っていれば、絶対にかなう』と」(宮木医師)

(文/山内リカ)

※アエラムック『AERA Premium 医者・医学部がわかる』より抜粋

AERA Premium 医者・医学部がわかる(AERAムック)

朝日新聞出版

amazon
AERA Premium 医者・医学部がわかる(AERAムック)
1 2 3 4

あわせて読みたい

  • 心臓病、最強の病院はここだ! 手術数が年間1000件以上も

    心臓病、最強の病院はここだ! 手術数が年間1000件以上も

    dot.

    2/28

    年中無休ですべての緊急症例を受け入れる大阪岸和田の心臓外科医

    年中無休ですべての緊急症例を受け入れる大阪岸和田の心臓外科医

    週刊朝日

    8/5

  • 【心臓手術】専門医に聞くセカンドオピニオンをとるべきケースは?

    【心臓手術】専門医に聞くセカンドオピニオンをとるべきケースは?

    dot.

    3/2

    【心臓手術】弁膜症患者はどう治療法を選べばいい? 外科か内科か? 専門医が解説

    【心臓手術】弁膜症患者はどう治療法を選べばいい? 外科か内科か? 専門医が解説

    dot.

    3/18

  • 天皇陛下の執刀医・天野篤医師も奮起した、外科医を「本気」にさせるいい紹介状とは?

    天皇陛下の執刀医・天野篤医師も奮起した、外科医を「本気」にさせるいい紹介状とは?

    dot.

    3/19

この人と一緒に考える

コラムをすべて見る

コメント

カテゴリから探す