■開業医は3人に1人が「8時間勤務」

 グラフを見てほしい。データから医師を取り巻く厳しい現状がわかる。30代の45%が10時間以上、外科医の19%が12時間以上も働いている。その一方、開業医はおよそ3人に1人が8時間未満で仕事を終える。眼科や整形外科では、それぞれ半数以上の医師が8時間以上10時間未満の勤務だった。また産婦人科では、46%もの医師が10時間以上働いていることがわかる。

 次に、現役医師に「平均年収」を尋ねた。800万円未満が全体の7%しかいない一方、1600万円以上が半数近くの46%もいる。2000万円以上に絞っても23%を占めており、やはり医師は「高給取り」の仕事のようだ。

■患者の笑顔が最高の喜び

 医師は何に仕事のやりがいを見いだしているのか。調査の結果、1位は何といっても、「患者さんに感謝されること」だった。

 医師は、患者一人ひとりの人生の重要な局面に立ち会い、目の前の患者の人生を背負ってベストと思われる治療を決めていかなくてはならない。その結果患者の期待に応えられ、笑顔で感謝されることは、医師にとって無上の喜びなのだ。調査でも、貯金や収入をやりがいに挙げる医師は皆無だった。

「収入や仕事を求めて志望しても続きません。医師をやりたい人であればとてもやりがいのある職業です」(50代男性、麻酔科・漢方医学)

「どんな仕事でも苦しいことやつらいことはありますが、命に関わる仕事なので責任は重大です。周囲の声で何となく、という気持ちでは長続きしません。本当になりたいのか、自分としっかり向き合って進路を決めてください」(50代女性、精神科)

 一方、日々進歩する医療の世界では、昨日の常識が今日は通用しないことも多い。

「医師という仕事は生涯勉強で自己を精進させ続ける必要がある。患者さんのため、世のため人のためという精神が大前提」(50代女性、乳腺・内分泌外科)

 医学部を卒業すると他業種に就くことは難しくなり、後で転職もしづらい。受験前に一度自分と向き合い、医師という「聖職」に身をささげる覚悟のほどを確かめておきたい。(文/山口茜、調査/メドピア株式会社)

※アエラムック『AERA Premium 医者・医学部がわかる』より