すでに触れた通り、ロボット手術は、これまで前立腺がんのみに健康保険が適用されてきたが、2016年4月、腎臓がんにも承認された。その意義を堀江医師はこう語る。

「全身の血液の5分の1にあたる大量の血液が集まる腎臓の手術は、ほんのわずかなミスが大出血につながる。これまでも腎臓の端にできたがんに腹腔鏡手術がおこなわれることはあったが、中心部や深部のがんには開腹手術しか手がなかった。しかし、そうした繊細な手術こそダヴィンチの得意とするところ。当院では、以前から自由診療で腎臓がんの手術にもダヴィンチを使用し、その効果と安全性の高さを証明してきただけに、今回の保険承認はうれしい」

 健康保険の適用により、3割負担の場合の自己負担額は、前立腺がんで約27万円、腎臓がんは21万円となる。ただし、いずれも高額療養費制度があるので、収入によって差はあるものの、窓口での支払金額はおおむね10万円程度になるという。

 すでに海外では、婦人科や呼吸器外科、心臓血管外科など、泌尿器科以外の診療科でもダヴィンチの導入が進んでおり、この波はいずれ日本にも伝播するだろう。

 ロボット手術は術者だけでなく、助手や看護師、技師などのストレスを大幅に減らした。手術スタッフのストレス軽減は医療ミスのリスクを下げ、患者にとっての安全性向上に直結する。こうした医療技術の進化は、手術をする側と、それを受ける患者の双方にとって、大きなメリットとなるのだ。(取材・文/長田昭二)