私が参加したチームも、専門性、能力、性格などとにかくバラバラでした。なかにはおおらかすぎて、集合時間に遅刻しては怒られる人も(笑)。でも、おかげで場はなごみました。

 閉鎖的な空間でけんかは起こらないか?と聞かれますが、けんかにはなりませんね。スペースシャトルが打ち上げられる1年半前にチームが決まって、そこからずっと一緒に訓練しますから、お互いのキャラクターはよく分かっているんです。誰かがイライラしていても「ああ、こういう事情だからだな」と推察できますから、もめることはありません。長期間一緒にいるので、家族のようになるんですね。

 私はよく緩衝材のような役割をしました。メンバーの仲は良かったのですが、ときに小さいけれど引っかかることもある。そのときは、なぜかみんな私のところに来て、不満や愚痴を言うんです(笑)。

 訓練中はさまざまな国籍の人がいましたが、最終的に私が入ったチームは、自分以外の6人がアメリカ人でした。国際宇宙ステーションに着くとロシア人も加わりましたが、どうも日本人である私は中立的な存在と思われていたようです。

 でも意見を言わないわけではなく、自分が考えている2倍か3倍は意見を言うように心がけていました(笑)。チームで何かを起こすには、意見が言いやすい空気が必要です。言い換えれば、意見交換しやすいチームならば新しいこともやりやすい。私はまず相手の話をしっかりと聞き、そして多くの意見を言った。それでも、欧米人とくらべると、「ちょっと少ない」くらいではないでしょうか。

 大切なのは、みんながリーダーになることだと思います。

 宇宙に滞在しているあいだはさまざまなミッションがありますから、順繰りにリーダーが代わります。私はロボットアームの担当だったので、実験をするときは一担当であってもアームの操作ではリーダーになる、という具合です。

 私のチームの船長は、強いリーダーシップと共に柔軟性を備えていました。海軍出身の屈強な男性でしたが、屋外キャンプで体力をつける訓練をしているときなど、真っ先に「ああ、疲れた!」「休みたい」と言うんです。自分がそうすることで、他のメンバーも発言しやすくしていたんですね。誰もがメンバーで、誰もがリーダーになる。緊急時には上意下達の統制が必要になるからこそ、限られた空間で成果を出すには、それぞれのメンバーがリーダーになれる柔軟性があるほうが、無駄がないと思います。

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