リオ五輪での引退を翻意し、Vリーグで最後のシーズンに臨む木村沙織。(写真:Getty Images)
リオ五輪での引退を翻意し、Vリーグで最後のシーズンに臨む木村沙織。(写真:Getty Images)

 リオデジャネイロ五輪の閉幕から2カ月。多くの競技が2020年の東京五輪へ向けたスタートを切るなか、バレーボール界も10月25日に中垣内祐一氏、中田久美氏を男女の日本代表新監督として発表した。

 すでに10月22日にはVプレミアリーグ男子大会が開幕を迎え、10月29日にはVプレミアリーグ女子大会が東京体育館で開幕。いよいよ本格的なバレーボールシーズンが幕を開ける。

 連覇を狙う久光製薬スプリングスは、中田監督が総監督に就任し、これまでは男子チームで指揮をとってきた酒井新悟氏が新監督の座に就いた。また、東京五輪での活躍に期待がかかるエースの古賀紗理那を擁し、9月のアジアクラブ選手権で優勝したNECレッドロケッツ、昨季準優勝で今季こそ頂点を狙う日立リヴァーレ、07/08シーズンから09/10シーズンにわたって3連覇を達成したチームを率いた菅野幸一郎監督が再び指揮をとる東レアローズ、リオ五輪にも出場した司令塔の宮下遥がゲームメイクする岡山シーガルズなど、それぞれのチームにさまざまな背景があり、見どころを挙げればキリはない。

 そんななかでも特に注目を集めるのが、リオ五輪では日本代表のキャプテンを務めた木村沙織(東レアローズ)だ。

 8月に30歳になった木村はリオ五輪を迎えるにあたり、この大会を自身の集大成と位置づけ、大会後の動向も明らかにせず、一時は「リオが木村の現役生活最後の試合になるのではないか」という声が多数を占めていた。実際に木村自身も「これで終わり、という気持ちもあった」と振り返ったように、日本で再び木村の雄姿が見られることはもうないのではないか、と思われていた。

 風向きが変わったのは、リーグ開幕を直前に控えた9月中旬。リオ五輪を終え、日本に帰国した際は「もうやり切った」という気持ちも強くあったが、1日、また1日と時間を過ごすごとに「本当にそれでいいのか」と迷いも生まれた。

 菅野新監督が就任し、また新たな雰囲気、環境のなかでバレーボールに取り組む東レアローズの若い選手たちの姿を見たら、心底「楽しそうだな」と思ったという。さらに同時期に、やはり今シーズンプレーするか否か、決断を委ねられていたチームメイトの迫田さおりも、木村と同様に迷いを感じていることを知った。そして迫田の「続けるならば沙織さんと一緒にやりたい」という思いを知った。

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