気鋭のロボットクリエーター・高橋智隆さんは、京都大学で学内ベンチャーを立ち上げ、現在は東京大学特任准教授という肩書も持つ。充実した大学生活を過ごすヒントを聞いた。
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「ロボホン、写真を一枚撮って」
「わかった、まかせて!」
高橋さんの呼びかけに、手のひらサイズのロボットが軽やかに応える。声の主は、2016年、シャープと共同で生み出したモバイル型ロボット電話「ロボホン」だ。人工知能が搭載されており、話しかけるだけで電話、メール、写真の撮影から、ニュースや天気まで教えてくれる。無機質なスマートフォンと違い、見た目や語り口はとことん愛らしい。
「ユーザーの嗜好(しこう)やプロフィルも学習していくので、自然な会話を交わせます。日常生活や旅行など、ともに時間を共有できるパートナーになります」
乾電池だけで何時間も動く「エボルタ」、組み立て式小型ロボット「ロビ」――。話題性の高いロボットを次々に世に送り出す高橋さんは、2度の大学生活を送っている。
最初に門をくぐったのは立命館大学だ。1993年、付属高校から内部進学で入学した。文系の産業社会学部を選んだのは、「就職時につぶしがききそうだったから」。入学後の目標も決まっていなかった。
「勉強は好きじゃなかったし、模範的な学生でもありませんでした。何となく興味がある授業は受けるけれど、そうでない講義は最低限の労力で単位を取る。そんな感じの学生生活でした」
3年生を終えたところで1年間休学し、オーストラリアやアメリカに留学する。オーストラリアでは趣味のスキーで一日が終わる日もあった。
「語学留学と言っていましたが、いわゆるモラトリアムですよね」
そんな“ふつうの大学生”を変えたきっかけは、復学後に待っていた就職活動だった。バブルは崩壊し、時は就職氷河期。日本は経済低迷期に突入していた。
「働くなら、自分のやりたいことと仕事を一致させたい。そう思って、趣味だった釣りとスキー、両方の製品を作るメーカーを受けました」