卒業した2003年春には、京都大学の学内ベンチャー第1号として、個人事務所「ロボ・ガレージ」を立ち上げた。

 その後も、京都大学を拠点にロボットづくりを続ける。卒業後、最初に注目を浴びたのは卒業制作でつくった「ネオン」だ。鉄腕アトムの誕生日である03年4月7日、横浜で行われたロボット博覧会で発表した。二足歩行の愛くるしいルックスは、ロビやロボホンにも通じる。

 愛らしい人型ロボットにこだわり続けるのは、人間とのコミュニケーションを重視しているからだ。機能優先で味気ない“機械っぽい”ロボットには食指が動かない。感情移入でき、「鉄腕アトム」のように日々の暮らしに寄り添うロボットは、人間的な要素と機械的な要素が複雑に絡み合い、挑戦しがいがあるという。

「これからはロボットと暮らす時代になります。スマートフォンに代わり、一人一台、ロボットを持つ社会を目指しています。目標は3年後です」

 現在は自身の会社を経営しつつ、東京大学先端科学技術研究センターの特任准教授として、駒場キャンパスの「高橋研究室」で夢を追い続けている。誰の真似でもない独創的な道を歩み続けるその原点は、京都大学の卒業式で見た光景にあった。

「卒業式の会場には何千人という学生がいました。京都大学に入り自分は頂点のようなところにいると思っていましたが、何もしなければ『One of them』にすぎないと気づかされました」

 これから大学を目指す若者たちには、こうエールを送る。

「大学に入ったら、人と違うことを積極的にやっていく姿勢が大事。ちょっとしたアクションで、『One of them』から抜け出せるはずです」

 ちなみに、現在、高橋さんが社外取締役を務める会社は、最終面接で選ばれなかったメーカーだ。独創的な道を歩み続ける高橋さんが、「One of them」を抜け出した証ともいえるかもしれない。(文・菅野浩二)

※AERAムック『国公立大学 by AERA』より