ケガからの復帰後、目覚ましい活躍を見せている上原。(写真:Getty Images)
ケガからの復帰後、目覚ましい活躍を見せている上原。(写真:Getty Images)

「ケガしている期間が一番辛かった。自分の中でもケガをした時点で今年は終わりかなとある程度覚悟していたんで…本当にトレーナーの皆さんが一生懸命やってくれたんで、早く復帰できて良かったです」

 9月28日のヤンキース戦でレッドソックスのア・リーグ東地区優勝が決定した直後、シャンパンを滴らせた上原浩治が発した言葉は実感がこもって聞こえた。

 メジャー8年目となった2016年。レッドソックスのセットアッパーは波乱のシーズンを過ごしてきた。前半戦は防御率4.81ともう一つの成績だった上原は、右胸筋の負傷で7月20日から戦線離脱。本人の言葉通り、「今季中のカムバックは容易ではない」という推測もボストンから聞こえてきた。41歳という年齢、今季いっぱいで契約切れという事情を考えれば、現役続行が危ぶまれる事態になっても不思議はなかっただろう。

 しかし、不屈のリリーバーは驚くべきスピードで9月5日にメジャー復帰。そして、さらに驚くべきことに、カムバック以降は11試合連続無失点とほとんど完璧な投球を続けてきたのである。

「このチームの鍵を握るのは上原だろう」

 先月末、ニューヨークでのヤンキースとのシリーズ中、「スポーツ・イスラストレイテッド」誌の記者はそう語っていた。

 同誌恒例のプレーオフ展望企画の中で、レッドソックスの注目選手として上原を取り上げるつもりだという。老舗雑誌のライターの言葉通り、予想外の復活を遂げた日本人右腕はポストシーズンでも重要な役割を担いそうである。

 今季のレッドソックスはチーム打率、得点、出塁率、長打率、OPSのすべてでメジャー1位という強力打線が売りもの。シーズン終了後の引退を表明したデービッド・オルティス、MVP候補のムーキー・ベッツらを中心とした破壊力は他に類を見ない。その一方で投手陣は万全とは言えず、特に抑えの切り札クレイグ・キンブレルは今季、1試合平均に換算すると5.1四球と、制球難に見舞われてきた。特にシーズン最後の3登板では、対戦した13人の打者のうちの6人を歩かせている。

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