予選は思い切って前半から突っ込み、26秒45という記録で50mを折り返して、トータル57秒27。準決勝では27秒14で折り返し、後半に力を温存する作戦で57秒05とさらに記録を伸ばす。

 そして決勝の前半は26秒81。予選と準決勝のおよそ中間のスピードを選択。後半の力を確保しながらも、前半のスピードも抑えすぎない作戦通りの泳ぎで、目標としていた56秒台に突入した。

 五輪初出場で予選、準決勝において課題と目的を持って臨み、その通りに泳ぎ切ったことはもちろんだが、何よりもコンマ数秒で泳ぎをコントロールしたことが、池江の強さを表している。

 プレッシャーや会場の雰囲気などで、どうしても思った通りのレースをすることが難しくなるのが五輪だ。そんな大舞台でありながら、自らが課したレース展開を忠実に守り、思い通りに泳ぎながらメンタルまでもコントロールする能力は驚嘆に値する。

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