「今回の事件は欧米でも大きく報じられましたが、大半のメディアは『しつけ』ではなく『罰として置き去りにした』という書き方。『熊のいる山中に子供を捨てた』と報道したところもある。アメリカは特に虐待問題に敏感で、スーパーの駐車場や公園などに子供を放置していただけで親が逮捕されることがあります。日本もそういった国を見習うべきだとの声もある」(教育ジャーナリスト)

 その感覚の違いあらわす例として、ほのぼの系の人気番組『はじめてのおつかい』シリーズ(日本テレビ系)が挙げられる。日本では子供の一生懸命な姿に感動する人が多いが、海外では「クレイジーな番組」「子供一人で買い物に行かせるなんて」と評されている。

「日本と海外では治安に圧倒的な差があるので、海外と同じ基準で判断する必要もなく、批判を気にしなくてもいいでしょう。アメリカが虐待問題に敏感なのは『虐待大国』であることの裏返しでもある。家庭事情はそれぞれですから、これが正解というものがないのが難しいところです。虐待に厳しい目が向けられるのは良いことですが、あまりに世間がナーバスになれば子育てが不自由なものになってしまう危険性もあります」(同)

 教育サービス大手・ベネッセコーポテーションの情報サイトでは「鬼がくるよ!」「お化けが出るよ!」といった子供を怖がらせるしつけに「子供を傷つけているのでは?」といった意見があると紹介され、賛否を巻き起こした。今まで誰も問題視していなかったことが「虐待なのか」と疑問を持たれる状況は今後も強まりそうだが、子育て世代は「しつけ」と「虐待」の線引きに頭を悩ませることになりそうだ。

(ライター・別所たけし)