2006年の放映当時、この作品は人気アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』以来の大ヒット作といわれた。いまでも熱狂的ファンが多く、いまでもキーホルダーをつけているくらいは珍しくない。これにアニメファンは「オタクを犯罪者扱いしようとしている」との意図を感じた人が多かったようだ。

 また、2012年には広島県の小6女児が誘拐された事件で逮捕された男子大学生(当時)に関して「小6女児監禁男はプリキュア好き」と報じられたこともあった。容疑者のロリコン癖と女児アニメを結び付けたかのような報道であり、これも「アニメオタク=犯罪者予備軍」という印象論を助長しかねないものだった。

 仮に容疑者が野球好きだった場合に「犯人は野球好き」と強調されることはない。それどころか、スポーツマンが性犯罪をすると「なぜスポーツをやっているのに……」と、スポーツ=健全という論調になるほどだ。アニメや漫画などのオタク趣味だけが「不気味さ」をクローズアップされ、世の善良なオタクたちが差別的な目線にさらされかねない状況が続いている。

 だが、昨今の若者にとって「アニメ」は当たり前の趣味。一昔前とは「オタク」の印象はがらりと変わり、オタクであることを公言するアイドルやモデルも増えている。国家を挙げた「クールジャパン」政策の重要コンテンツでもある。それなのになぜ、いまだにメディア上では「アニメ」や「オタク」に対する“ヘイト報道”が目立つのだろうか。

「スポーツ紙のデスクなどは中高年世代が多く、アニメや漫画などの家に閉じこもる趣味は『不健全』という先入観があり、あまりそれらのジャンルを知らないこともあって無知から偏見が生まれる。読者も中高年が多いため、この偏見をすんなり受け入れてしまう。また、オタク層はヘイト攻撃を受けてもネットで騒ぐくらいで具体的な抗議をすることがなく、印象論でレッテル貼りがしやすい存在です。報道の対象がオタクではなく『在日朝鮮人は犯罪者予備軍』『黒人は罪を犯しやすい』といった内容だったら悪質なヘイトスピーチとして社会に糾弾されているでしょう」(マスコミ関係者)

 安易にアニメと事件を結び付ける時代遅れの報道を続けていれば、メディアは若者世代にソッポを向かれてしまいそうだ。

(ライター・別所たけし)