工業デザイナーの水戸岡鋭治さんが改装を手掛けた「丹後くろまつ号」
工業デザイナーの水戸岡鋭治さんが改装を手掛けた「丹後くろまつ号」
木へのこだわりが感じられる車内で沿線の特産品を味わえる
木へのこだわりが感じられる車内で沿線の特産品を味わえる
コンセプトは「丹鉄FOOD EXPERIENCE」。食を通じて地元の人たちと触れ合える
コンセプトは「丹鉄FOOD EXPERIENCE」。食を通じて地元の人たちと触れ合える
調理人が目の前で最後の仕上げをしてくれるのが楽しい。写真は丹後ばらずし
調理人が目の前で最後の仕上げをしてくれるのが楽しい。写真は丹後ばらずし
備え付けのタブレット端末で生産者の思いにも触れられる
備え付けのタブレット端末で生産者の思いにも触れられる

 有名工業デザイナー、水戸岡鋭治さんの代表作といえば、JR九州の豪華観光列車「ななつ星in 九州」だが、1人20万円台からというお値段にはため息しか出ない。しかし、同じ「水戸岡デザイン」でも、1万円以下で楽しめるグルメ観光列車が北近畿地方にある。兵庫県、京都府北部を走る京都丹後鉄道(丹鉄)の「丹後くろまつ号(くろまつ)」だ。2016年4月から始まる新コースの試乗会が行われると聞き、参加してみた。

【丹後くろまつ号 料理や内装写真などはこちら】

 16年3月28日、丹鉄の豊岡駅。ホームで待っていたのは、漆黒のボディーに金色のラインが入ったクラシックな雰囲気のくろまつ。車両全体に効果的に配した松のロゴや、下部にすっと伸びたライン、ラインに沿った「KURO-MATSU」などのアルファベット文字が特徴だ。

 わくわくしながら乗り込む。内装は天然木をふんだんに使い、窓のブラインドは京すだれ、壁や掛け軸や日よけなどには松がデザインされている。全体的に和モダンといった雰囲気だ。

 くろまつは、前身の北近畿タンゴ鉄道(15年4月、現在の運行会社に変更)時代に普通列車として走っていた車両を改装したもので、水戸岡さんがデザインを担当。「走るダイニングルーム」として、乗客に沿線の名店の料理を提供してきた。

 今回、「FOOD EXPERIENCE(食の体験)」をコンセプトに、食だけでなく、食材の生産者や調理人の思いを含めた沿線全体の魅力を体感してもらう4コース(税込み7800~8800円)を新たに開設。16年4月1日から運行を開始した。

 筆者が参加したのはそのうちの一つ、豊岡駅午前10時8分発、天橋立駅午後0時20分着の「BETSUBARAコース」(同8800円)。【1】「漁師汁」(久美浜)【2】「コウノトリ大豆のおぼろ豆腐」(豊岡)【3】「丹後ばらずしのまつぶた盛り」(網野)【4】「地魚の一刻干しと黒ちくわの七輪焼き」(天橋立)の4品が味わえる、お土産付きのプランだ。他の3コースも4品程度の料理が提供され、上記以外にくろまつ限定の米粉スイーツ、丹後の地酒などを組み合わせている。

 列車が走りだし、車窓にはのどかな田園風景が広がる。15分弱で一つ目の停車駅、久美浜駅に着いた。ホームに降りると、目の前には移動式屋台が。ここでは、地元観光協会が、ハマチやタイなどのあらを使った漁師汁を出してくれるのだ。名産の「鯛せんべい」とネギを載せていただく。

 あら汁を飲むと、体の中にじんわりと暖かさが広がった。小天橋(しょうてんきょう)観光協会専務の福田武司さん(57)が「昆布だしをベースに酒としょうゆで味付けし、うっすらとショウガを入れた」と味付けのこつを教えてくれる。

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