道路をひたすら歩くだけの旅。少しの寄り道で大きな時間のロスになるため、ほとんど寄り道はしない。当然のことながら、歩き続けていると疲労はたまるし、体も痛くなってくる。野宿は寒いし、危険も伴う。警官から職務質問を受けることもある。なぜそこまでして旅を続けるのか。

「観光地に行っておいしいものを食べて楽しむのならわざわざ歩く必要はない。結局は自己満足なのだろうが、自分に課したキツイことを乗り越えて『やってやったぜ』と思うためにやっている」

 誰かに言われてやっているわけではない。だからこそ、「きつくなったら途中でやめてもいい」と思っている。高橋さんは、「基本的にM(マゾヒスト)だから」と言って笑った。

 ガラケー(フィーチャーフォン)ユーザーである高橋さんは、今回の旅の行程や感想は日記形式でゲームブックに書き込んでいる。なんとなく始めた取り組みが注目されるようになり、他のプレーヤーから励ましやルート情報などが書き込まれるようになった。「これまでゲーム内で交流のなかった人たちが情報をくれたりして本当にありがたい」と感じている。

 今後は「中津川で栗きんとんを買う」ために岐阜県を目指し、そこから長野などを通って帰宅する予定だ。当初は2カ月ぐらいを想定していたが、それ以上かかりそうな感じだという。「とりあえずは行けるところまで行ってみます」。自己満足と言っても、なかなかできるものではない。残りは直線距離でも450キロ以上。体に気を付けて歩き続けて、「やってやったぜ」と感じてほしい。

(ライター・南文枝)