この試合でもそんな一面がみられた。カンボジアはゴール前に多くの選手を配して“超守備的な布陣”を敷いた。それに対して、日本は何度もサイドから崩そうと試みたもの、クロスを上げても、岡崎慎司や武藤嘉紀のクリーンシュートにつながらなかった。これは、ハリルホジッチ監督が試合後の会見で語ったように、「ビッグチャンスに慌てて、悪い選択をした」点も一因ではあるが、カンボジアDFの身体を張った守備やGKソウ・ヤティーの美技に阻まれたシーンも1回や2回ではなかった。

 一昔前ならば、波状攻撃を繰り返すうちにカンボジアのようなレベル相手であれば、集中力やスタミナが切れて、大量失点や連続失点につながることも多かった。だが、それはもう“昔話”として忘れた方がいい。スタメンの平均年齢が「23・4歳」という若いチームは、足をつりながら、日本に最後まで必死に抵抗した。

 過去3大会のW杯予選、日本は3次予選からの出場だったが、3次予選も最終予選も「勝って当たり前」という雰囲気が漂っていたし、事実その通りになった。

 それは、日本や韓国をはじめとするアジアの強豪国とそれ以外の国で実力差があったからだ。だが、今回の予選を見る限り、日本の2次予選突破が保障されていると思わない方がいいだろう。

 むしろ、日本がW杯への初出場を決めた、1997年のフランスW杯アジア最終予選のように苦戦を強いられる可能性もある。ただ、それはそれで、予選突破のスリルを味わう楽しみもある。「勝てば天国、負ければ地獄」というW杯予選特有の緊迫感を久々に味わうのも悪くはないのかもしれないが……。

サッカージャーナリスト・六川亨)