飼育実験では、ふ化後8カ月目から産卵した。しかし、水温を12度以下に下げると低水温下では産卵しなかった。水温により、飼育中のサンマの栄養分が不足する可能性もあるため、えさを十分に与えてみたが、やはり産卵しない。このあと水温を上げると一斉に産卵を始めた。つまり、水温の低下はサンマの「少子化」を招くらしい。同センター東北区水産研究所主任研究員の巣山哲さんは次のように分析する。

「サンマは産卵数が少ないため、生存戦略として、ある程度環境のいいところを選んで産むものの、環境がよいところでも集中して産卵はせず、いろんな場所・時期に産卵を分散することで生き延びる可能性を探っているのではないか」
 
 サンマは1年中産卵するが、太平洋側では冬が最も多い。水産総合研究センター中央水産研究所では毎年、1~3月に本州南側の黒潮が流れる海域で、サンマの子どもの量を調査している。多くは黒潮に近いところで生まれ、春から夏にかけて北上し、豊富なプランクトンなどを食べて太る。秋から冬にかけては産卵のため南に向かうことが知られており、日本の近海で捕獲されるのは、南下の途中のものである。

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