たとえば、彼女の著書を見ても、「極度の出不精」と自分を評し(『小泉今日子実行委員会』)、

「家で静かに過ごす時間っていうのもとっても大切で、寝っ転がってテレビを観たり、本を読んだり、お料理をしたり、お掃除をしたり、小雨と遊んだり、昼寝をしたり、長風呂したり、そういう時間が充実するとやっぱり幸せ」(『小泉今日子の半径100m』)

 とも述べています(「小雨」というのは、小泉今日子宅に住んでいるの名前です)。

 小泉今日子は、「自分一人の時間」を非常に大事にしていることがうかがえます。こうした価値観は、「仲間とのつながりが最優先」という方向性からは生まれてきません。

■私たちにも「変化すること」はできる

 このように見ていくと、小泉今日子が現在のステイタスを築きあげた秘密には、簡単にたどりつけないことがわかります。

 前に触れたとおり、松田聖子は、デビュー当初から突出した歌唱力を持っていました。まさに「早熟の天才」で、一般人は、彼女に学ぼうにも学びようがありません。

 小泉今日子は、芸能界入りしたばかりの頃は、歌も演技も、アイドルとしてはまあまあというレベルでした。現在のような「かけがえのない表現者」になったのは、何回もの「脱皮」を経た後です。

「そこそこのアイドル」から「代役の見つからないパフォーマー」へ――年齢とともに自分の格付けをアップさせていった小泉今日子の生きかたは、一般人にも参考になると思います。変化していくことなら、私たちにも可能かもしれないからです。

 次回から、小泉今日子の「変化する力」の秘密に、さまざまな角度から迫っていきます。

※助川幸逸郎氏の連載「小泉今日子になる方法」をまとめた『小泉今日子はなぜいつも旬なのか』(朝日新書)が発売されました

(注1)
原田曜平『ヤンキー経済 消費社会の主役・新保守層の正体』(幻冬舎)
斎藤環『ヤンキー化する日本』(角川oneテーマ21)
阿部真大『地方にこもる若者たち』(朝日新聞出版)
速水健朗『ケータイ小説的。 “再ヤンキー化”時代の少女たち』(原書房)

助川 幸逸郎(すけがわ・こういちろう)
1967年生まれ。著述家・日本文学研究者。横浜市立大学・東海大学などで非常勤講師。文学、映画、ファッションといった多様なコンテンツを、斬新な切り口で相互に関わらせ、前例のないタイプの著述・講演活動を展開している。主な著書に『文学理論の冒険』(東海大学出版会)、『光源氏になってはいけない』『謎の村上春樹』(以上、プレジデント社)など