■「スマホで十分」の大ウソ

あるインフルエンサーの人は、「スマホでも動画編集をしたり、絵を描いたり、プログラミングしたり、ワードもエクセルもできる」と語っています。しかし、そんな彼も、10代や20代で最初にコンピュータに慣れ親しんだ経験は「パソコン」によるものです。

 ちゃんとキーボードで操作する環境で育った上で、その経験がベースになっていることで「スマホでも置き換えられる」と言っているだけです。

 パソコンに慣れている人は、同じことをスマホでもすることができます。しかし、最初からスマホだけに慣れてしまった人は、パソコンを目の前にすると、途端に何もできなくなります。

 物事はつねに「大は小を兼ねる」のです。「我が子にパソコンは早いだろう」と思ってしまっている親は、重大なミスを犯しています。

 子どもだからこそ、難しいことからやらせてみるべきなのです。子どもの頃の「好奇心」や「吸収率」は、親の想像をはるかに超えます。30代や40代以上になってから初めてワードやエクセルを覚えるのとは、覚えるスピードが段違いに異なります。

 だから、絶対に子どもにはタブレット型PCを買い与えないでください。YouTubeを次から次へと見ることしかできなくなります。そうなると、子育てのときは静かになってラクかもしれませんが、その子にとって大事な「じっくり腰を据えて取り組む」というチャンスを奪ってしまうことになりかねません。

■ITへのアレルギーがなくなった「僕の体験」

 僕は、親に感謝していることがあります。

 それは、僕がファミコンを欲しがったときに、なぜかパソコンを買ってきたことです。その当時は、子どもながらに、「なんでパソコンなんだよ……」と思いつつも、それでも新しい機械を目の前にしたワクワクがあり、好奇心でどんどん操作していくうちに、パソコンやITスキル、プログラミングに対するアレルギーがなくなっていったんです。

 やはり「環境」が大事です。与えられた環境の中でしか、子どもは育ちません。

 別に、全員の子どもに「プログラマーになれ」「IT業界で食っていけ」と言っているわけではありません。ただ、これからの時代は何をするにせよ、パソコンでものづくりができるスキルがあると、子どもの才能を開花させる可能性を最大限に引き上げます。

 これからは、既存のものやサービスに付加価値を与える方向性でしか、日本は生き残れなくなっていきます。そういう社会で活躍できる子に育てるためにも、親には正しい選択をしてほしいと願っています。

ひろゆき 本名:西村博之
1976年、神奈川県生まれ。東京都に移り、中央大学へと進学。在学中に、アメリカ・アーカンソー州に留学。1999年、インターネットの匿名掲示板「2ちゃんねる」を開設し、管理人になる。2005年、株式会社ニワンゴの取締役管理人に就任し、「ニコニコ動画」を開始。2009年に「2ちゃんねる」の譲渡を発表。2015年、英語圏最大の匿名掲示板「4chan」の管理人に。2019年、「ペンギン村」をリリース。主な著書に、24万部を突破した『1%の努力』(ダイヤモンド社)がある。