Windowsが果たした偉大な功績は、改めて紹介するまでもないだろう。パソコンは、1992年頃から世に出始め、マイクロソフトが1995年に発売したWindows95を契機に劇的に普及する。また、業務用ソフトとしても発展を続け、ビジネスオペレーションのインフラにもなっていった。

 そんな巨人が、初めてうろたえるほどの衝撃を受けたのが、スマートフォンの登場だった。

 マイクロソフトも、「Windowsモバイル」というスマホを開発した。このOS自体は、「iOS」や「アンドロイド」に決して負けない優れたOSだった。しかし、最大の戦略ミスは、Windowsのフルスペックをスマホに移植しなかったことだ。スマホでWindowsが動く世界、言い換えればWindowsがプラットホームとなるスマホを創らなかった。それが最大の敗因になった。

 スマホでWindowsがフルで動かせたならば、絶対にWindowsが勝者になっていただろう。なぜならば、日常の暮らしや仕事で使っているOSが、そのままスマホというユビキタスなツールでも使えるからだ。

 しかし、マイクロソフトにその発想はなかった。「スマホにはスマホのOSが必要だ」と考えたのだ。フルスペックWindowsのスマホへの移植に挑戦していれば、今の状況は大きく変わっていたはずだ。

 こうしたマイクロソフトの戦略ミスを誘引したのはインテルだ、というのが私の見立てだ。

 皆さんご存じの通り、マイクロソフトとインテルは、“ウィンテル”と呼ばれるコンビで躍進を続けてきた。「卵が先かニワトリが先か」ではないが、Windowsの機能向上にCPUの機能向上が呼応し、CPUの機能向上にWindowsの機能向上が呼応した。

「複雑な作業をとにかく早く」がウィンテルの基本思想だが、スマホにそれほどの機能はいらない。むしろローパワーな機能で十分だった。インテルにとっては“うまみ”がないが、もしマイクロソフトが彼らにローパワーなCPUを作らせていたら、戦いは変わっていただろう。

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スティーブ・バルマーの辞任でスマホ戦略に幕引き