●日本の保守勢力を維持・拡大する 舞台装置として国策研究会が機能

 国策研究会を支えた幹部に矢次一夫という人物がいる。代表常任理事など要職を歴任し、戦後は政界の黒幕として政治の舞台裏でも活躍した。評論家の大宅壮一氏からは「昭和最大の怪物」と称され、岸信介元首相の信任が厚く、日韓国交正常化交渉にも水面下で深く関わったとされる。

 こうした国士の系譜は連綿と引き継がれ、現在の国策研究会には、財界でも指折りの重鎮たちが多く所属している。【図版1】は、国策研究会の幹部として名を連ねる主な企業首脳だ。

 現会長は森トラスト会長の森章氏。相談役にはキッコーマン取締役名誉会長の茂木友三郎氏、JR東海代表取締役名誉会長の葛西敬之氏、国分グループ本社会長兼CEOの國分勘兵衛氏ら、保守派経営者が居並ぶ。

 国策研究会の役員には、他にも多くの企業経営者が名を連ねる。今年9月1日時点で14人の理事、13人の評議員、44人の幹事などがおり、定期的に懇談会を開いている。

 懇談会における過去の講演者も豪華で、調べてみると、安倍氏をはじめ、元自民党幹事長の石破茂氏、第36代自衛艦隊司令官(海将)でジャパンマリンユナイテッド顧問の香田洋二氏、民間人初の防衛相となった拓殖大学総長の森本敏氏ら保守派の論客が勢ぞろいしていた。

次のページ