最近では、新卒採用においても「雑談力」が重視される傾向にあります。書類や自己PRの場である面接だけでなく、インターンシップやOBOG訪問などでの何気ない会話のやりとりから、「あの学生はコミュニケーション能力が高い」などと判断され、高い評価を受けることも。

 商談や接客などでも雑談力は重要視されています。

 いまや巧みな営業トークがあればモノが売れるという時代ではありません。モノが売れない時代だからこそ、お客様と信頼関係を築くことが大事。そこで頼りになるのが雑談力です。

 雑談力とは、つまるところコミュニケーション能力。本当に雑談が上手な人は、ダラダラとおしゃべりはしません。ひと言、ふた言で場があたたまれば、「それではまた!」とサクッと会話を切り上げたり、商談であれば「本題に入ります」とスイッチを切り替えたりします。このメリハリこそが雑談力の肝。相手との適切な距離感を保てる人は、雑談力のある人なのです。

●気まずい時間を、心地よい時間に

 ビジネスシーンもそうですが、実際の日常生活でもっとも多い雑談の機会は、ちょっとした「すきま時間」にあります。

 たとえば、エレベーターでご近所さんと2人きりになってしまったとき、パーティーや勉強会などで周囲は知らない人だらけのとき。

 その沈黙は苦痛となり、早くこの時間が過ぎてくれないかと、祈るような気持ちになっている自分がいる……。

 また、知り合い同士でも、親戚や会社の上司、取引先、まだ仲良くなっていない人たちとは、話題探しも大変で、話が続かず、気まずい空気が流れてしまう……。

 エレベーターに乗り合わせた人となら、降りる階に到着するまで。

 駅のホームやバス停でばったり会った人となら、電車やバスに乗るまで。

 商談前なら、本題に入るまで。パーティー会場での「ご歓談ください」なら、次の催しが始まるまで。

「気まずい」時間は、シチュエーションによって異なります。

 この「気まずい時間」を「心地よい瞬間」に変えることができたら……。

 ほんのちょっとの時間の、何気ない会話ができるようになるだけで、人づき合いに対する苦手意識はなくなり、コミュニケーション能力も高まり、あなたの好感度も確実にアップします。たかが雑談、されど雑談なのです。

 日本で暮らしている限りは、日本語で誰かとコミュニケーションをとる時間のほうが、外国語を使って会話をする時間より、圧倒的に長いでしょう。

 一生の中でもっとも多くの時間を費やすものを、よりよくしていくことは、決してムダではないはずです。