そもそも雑談のもつ意味とは?(※イメージ)
そもそも雑談のもつ意味とは?(※イメージ)
齋藤 孝(さいとう・たかし)/1960年、静岡県生まれ。東京大学法学部卒業。同大学院教育学研究科博士課程を経て、明治大学文学部教授。専攻は教育学、身体論、コミュニケーション論。テレビ、ラジオ、講演等、多方面で活躍。著書は『声に出して読みたい日本語』(草思社)、『読書力』『コミュニケーション力』(岩波新書)、『現代語訳?学問のすすめ』(ちくま新書)、『質問力』(ちくま文庫)、『語彙力こそが教養である 』(角川新書)、『雑談力が上がる話し方』『雑談力が上がる大事典』(ダイヤモンド社)など多数ある。(撮影/佐久間ナオヒト)
齋藤 孝(さいとう・たかし)/1960年、静岡県生まれ。東京大学法学部卒業。同大学院教育学研究科博士課程を経て、明治大学文学部教授。専攻は教育学、身体論、コミュニケーション論。テレビ、ラジオ、講演等、多方面で活躍。著書は『声に出して読みたい日本語』(草思社)、『読書力』『コミュニケーション力』(岩波新書)、『現代語訳?学問のすすめ』(ちくま新書)、『質問力』(ちくま文庫)、『語彙力こそが教養である 』(角川新書)、『雑談力が上がる話し方』『雑談力が上がる大事典』(ダイヤモンド社)など多数ある。(撮影/佐久間ナオヒト)

 情報伝達や目的のはっきりした会話はできるけれど、意味のない話をするのは苦手という人は多い。そもそも雑談のもつ意味とは、なぜ今、雑談力が求められているのか。

●何気ない会話こそ難しい

 最近では、ビジネススキルの1つとして「雑談力」に注目が集まっています。企業研修のカリキュラムにも組み込まれているほど。一見何気ない会話の思える雑談ですが、案外苦手意識を持つ人も多いようです。

「あら、○○さん」

「ああ、どうも」

「……」

――信号待ちの交差点でご近所さんに会っても、話ができず間が持たない。

「もうすぐ上司が参りますので、しばらくお待ちください」

「わかりました」

「……」

――取引先で商談をするとき、本題以外の話ができない。

「はじめまして。新しく御社の担当になった○○です。よろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

「……」

――初対面の人と名刺交換しても、その後の話が続かない。

 ああ、話し上手になれたらいいな――でも、口下手だから。

 ああ、誰とでも気軽に雑談できたらいいな――でも、トーク術がないから。

 ああ、気のきいた返しができるといいな――でも、コミュ力がないから。

 こんな風に考える人は少なくありません。

 でもそれは考え違いです。

 雑談の本質は、相手との距離を縮め、その場の空気を和らげることにあります。ペラペラと饒舌に胸中を披歴することではありません。話の上手下手、トーク術の有無はまったく関係ないのです。

 黙っていることで、自分も、そして自分と同じように相手も感じているだろう「気づまり感」や「気まずさ」「居心地の悪さ」を解消できればそれでOK。

 ちょっとした法則やルールを知り、簡単なテクニックさえ身につければ、本当は雑談なんて誰にでもできます。

 いつも沈黙になってしまう、雑談はどうも苦手という人は、雑談ができないのではなく、まだそのやり方を知らないだけなのです。

●英会話にはお金をかけるのに、なぜ「日常会話力」は磨かない?

 グローバル社会、国際化社会が叫ばれるこの時代、英語や中国語をはじめとするさまざまな外国語を身につけようと外国語会話スクールに通ったり、教材を購入して勉強したりする人が増えています。

 何万円ものお金や多くの時間をかけて異文化である外国語コミュニケーションを学ぶことに比べれば、ネイティブである日本語による何気ない日常会話、雑談という気軽なコミュニケーションの簡単なルールやテクニックを身につけることは、決して高いハードルではないはず。英会話を学ぶより、日々の雑談のコツを知ることのほうが簡単かつ有効なのです。

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