飯田:「ありがとうございます。もちろん、そのためにはビジネス的にクリアしていかなければいけないハードルがたくさんあります。ありがたいことに今回の『民王』は、たまたまうまくいった稀有なケースです。まず原作者の池井戸先生が、私のあれをやりたい、これをやりたいというわがままに、『好きにやっていいですよ』というスタンスで全部認めてくださったことが一番大きく、キャストの皆さんもそれを面白がってくださった。細かく最初から戦略を立てていたというより、キャストとスタッフでできるだけたくさんの人に面白いと思ってもらえるものを作ろうと頑張っていたら、気がついたらスペシャルドラマにつながり、貝原のスピンオフ、ネットドラマ、ムック本の制作につながっていった、という感じです」

――今回の『民王スペシャル~新たなる陰謀~』(4月15日放送。一部地域を除く)は、まったくのオリジナル脚本になりますが、どんな内容になるんでしょうか?

飯田:「実は原作の中で1つだけやっていなくて気になっていた要素が、『同時多発的に入れ替わりが起こる』っていうものなんです。連ドラの中では武藤総理とその息子、総理の政敵である蔵本とその娘、という2組の入れ替わりを扱いましたが、原作ではもう2組ほど入れ替わっているんですよ。本当は連ドラでやりたかったんですけど、8本の話数では描ききれなかった。だから、スペシャル版ではそれをやろうと脚本の西荻さんと話していて。

 今回は、武藤総理と翔ちゃんの入れ替わり、さらにその入れ替わった翔ちゃん版の総理がまた別の何者かと入れ替わってしまうんです。果たして今度は誰がなんの目的で、入れ替わりを仕組んだのか、行方不明になった翔ちゃんの魂はどこにいるのか、というのがスペシャル版のストーリーです。

 ほかにも国会中継中の大臣たちが一斉に幼稚園児の魂と入れ替わってしまったりもします。3歳の子役たちのオジサン演技と、ベテラン俳優の幼児演技、ともに爆笑請け合いです!?

 あと、私の一押しの見どころは遠藤憲一さんのラップです!?台本を読んだ遠藤さんからは苦渋の表情で『何でもできると思わないでくれ』と言われました(笑)。ご自身的には出来上がりに自信は全くなさそうでした(笑)が、とても味がある仕上がりだと思います」

――確かに、最近はリアルな政治の世界でもまるでコメディのようなことが起こってますよね。

飯田:「実は貝原が主役のネットドラマ『民王 番外編?秘書貝原と6人の怪しい客』のほうも、実際に政治家の秘書さんにお伺いした面白い話がネタになっています。陳情ってご存じですか??一般の方が公的機関に善処してもらいたいことなどをお願いすることなんですが、議員先生もお忙しく、秘書の方が対応することがあるそうなんですね。で、その陳情というのが、『えっ、そんなことまで来るの?』っていう内容も多いらしくて。選挙区の偉い方の息子が駆け落ちしたから探してほしいとか。取材したらその陳情話が面白かったので、ネットドラマはそれを題材にしようと思ったんです。

 貝原がひょんなことから仕えることになったおバカ議員のもとに寄せられるトンデモ陳情話が、毎回ワンシチュエーションコメディで展開していくという、4コマ漫画に近いものになっています」

――ネットドラマの配信スタートと同じ日に放送される、こちらも貝原を主役にしたスピンオフも、ファンには嬉しいところですが。

飯田:「こちらの『民王スピンオフ~恋する総裁選~』は、わりと硬派な政治ドラマになっていて、貝原が武藤総理に仕える前の話です。貝原はかつて自分の父親が秘書をしていた大物議員の元で働いていたんですが、そこで起こる様々な陰謀や政治的な駆け引き描かれていきます。なぜ貝原があんなキャラクターになったのか、そのあたりの全貌がわかる内容です。連ドラの『民王』やスペシャル版とは違って、泣けるストーリーになっています。あと、貝原の恋愛も描かれます!」

――若い世代のテレビ離れ、ドラマ離れが叫ばれている昨今、熱狂的なファンを生んでいる『民王』のビジネスモデルは、制作現場にも明るい話題ですね。

飯田:「視聴者の皆さんに新しい楽しみ方を提供できるなら、様々なメディア展開を試行錯誤していくこともこれからは重要なのではないかと思います。とはいえ、テレビ局の人間としては、視聴率を取らなければいけないですし、まずは番組を面白いと思っていただけなくてははじまらないですから、プロデューサーは一生懸命面白い番組を作っていくことが第一義だと思っています」