孫社長の後継者育成機関であるソフトバンクアカデミアの第1期生に選抜されたときには、私の事業プレゼンが第1位を獲得。それを機にグループ会社をはじめ多くの業務に従事することとなりました。また、孫社長が行うプレゼンの資料を作成するチャンスも何度もいただくことができました。

 その後、役職が上がり、部署を任せられるようになると、それまでに培ったプレゼン・スキルを部下たちに徹底的に伝授。プレゼンのやり方をルール化することで、部署内の意思決定スピードを速めることに成功しました。もちろん、私の部署が提案する事業プレゼンもロジカルなプレゼンとなっていき、採択率が上がりました。その実績が評価され、社内認定講師制度のプレゼン講師を拝命。私のやり方を実施した部署で、決裁スピードが1.5~2倍になることが実証されました(会議1時間当たりの決裁数で測定)。

 1年前に独立してからは、ソフトバンクはもちろん、ヤフー株式会社、株式会社ベネッセコーポレーション、大手鉄道会社などの社内プレゼン研修を歴任。多くの会社が意思決定スピードを上げるために、社員のプレゼン・スキルの向上に強い意欲をもっていらっしゃることを実感しています。

●社内プレゼンは「資料」で9割決まる

 7月31日に発刊される『社内プレゼンの資料作成術』(ダイヤモンド社)は、私がソフトバンクで磨き上げた社内プレゼン・ノウハウのすべてを公開するものです。

 私は、自分のプレゼンに自信をもっている人と出会ったことはほとんどありません。しかし、このノウハウを身につければ、誰でも確実に採択率を飛躍的に高めることができます。そして、自信をもってプレゼンできるようになります。

 そのために、まず解いていただきたい誤解があります。

 プレゼンというと、「話し方」が大事とよく言われます。たしかに、スティーブ・ジョブズが行うプレゼンやTEDのようなプレゼンでは、「話し方」「身振り手振り」など総合的な表現力が欠かせません。なぜなら、あのような不特定多数の人を対象としたプレゼンの目的は、聴衆の感情に訴えかけて、インパクトを与えたり、共感を集めたりすることにあるからです。

 しかし、社内プレゼンは、そうしたプレゼンとは根本的に異なります。社内プレゼンの対象は決裁者のみ。しかも、重要なのは感情ではなくロジックです。ビジネスのロジックに合致していれば、ほぼ間違いなく決裁を得ることができるのです。だから、普通の話し方で何の問題もありません。むしろ、ジョブズを生半可にマネても、かえって決裁者の心証を害するのがオチです。

 では、社内プレゼンの正否を決定づけるのは何か?

 資料です。私は、社内プレゼンは「資料(スライド)で9割決まる」と考えています。決裁者が意思決定するために必要な情報が、わかりやすく説得力をもって展開される資料をつくることができれば、当日は、それに沿って話すだけでOK。資料の内容に自信があれば、話し方にも自然と自信が備わります。その意味では、「資料が10割」と言ってもいいほどです。

●社内プレゼン最大の失敗は「これ」だ

 社内プレゼン資料のポイントは2つ。

 シンプルであること。そして、ロジカルであること。この2つです。

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