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隣の芝生、980円。

文・内藤みか

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 学生時代からの女友達と、ファミレスでランチをした。ドリンクバーもついたパスタが980円。

 40を過ぎた独身の女友達と会うと、どうしても子どもの話題には気を使う。その日会った友人は、恋人はいるけれど、いろいろな事情で結婚には至っていなかった。

 30代のうちはまだ良かった。向こうも「早く結婚して子どもを作らなくちゃ。まだ大丈夫だよね?」と言えていたし、私も「全然大丈夫だよ」と答えられた。
 でも40を過ぎると、私から彼女に子どもの話を聞くことは、はばかられた。かといって私の子どもたちの話をしないわけにもいかない。

 彼女は、今の恋人とできるだけ早く結婚したがっていた。そして子どもが産めるのなら産んでみたいと言う。気持ちは痛いほどわかる。私も息子を産んだ後になかなかふたりめが出来なくて、焦ったことがあったから。

 人はどうしてこんなにも自分の子どもが欲しいのだろう。実際に産んでみると、時間もお金もものすごくかかるし、大人になるまで、いや大人になっても責任を持たなくてはならない。しっかり育てたいのに本人はなかなか言うことを聞いてくれなかったり、正直、疲れることも山とあるのに。

 たとえば私は、娘の中学受験が終わった途端、息子が大学受験生となり、結局心配の種が尽きない。仕事と生活に追われ、なかなか自分の時間も取れない。でもそんなあたふたしている私が彼女はうらやましいと言う。

 2時間ほど話したところで彼女は誰かにメールをした。恋人が迎えに来るのだという。私はそれを聞いて、いいなあとつぶやいた。私は離婚以降、10年もひとりで過ごしている。彼女はその間、恋人とずっと過ごしてきた。きっと甘えることも励ましてもらうこともあったことだろう。支え合える相手がいる彼女が、心底うらやましかった。

 おたがいに隣の芝生が青く見えるのかもね、と私たちは淋しく笑い、ほどなくして彼女は恋人の車に乗って帰っていった。彼女には送迎してくれる人がいるけれど私は子どもたちを送迎する立場である。やっぱりうらやましい。でも彼女もきっと子どもが待つ部屋に戻る私のことをうらやましく思っているのだろう。


(更新 2013/4/15 )


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プロフィール

内藤みか(ないとう・みか)

 小説家、エッセイスト。山梨県出身。デビュー当時「ケータイ小説の女王」の異名をとリ、現在も電子書籍サイトのダウンロードランキング常連。「年下男恋愛」「イケメン」についてのコンテンツを作り続け、「イケメン評論家」としても活動。近年はイケメン恋愛ゲームのシナリオや、芝居の脚本も手がけるように。『夢をかなえるツイッター』などSNSに関する著作も。近著に『誰も教えてくれない Facebook & Twitter 100のルール』。twitterアカウントは @micanaitoh