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授業参観、無料。

文・内藤みか

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 息子が高校に進学して初めての学校公開日(つまり授業参観日)がやってきた。

 中学三年生の時は、ほとんど登校もせず、登校しても隙あれば逃げ帰ってくるような子どもだったのに、今はその逆の生活を彼は送っている。毎日決して休まないし、閉門時間まで校内に残り、友人と語り合っているのだとか。

「変わった友達が多いんだ」
 という言葉通り、確かに、息子と同じように授業中に指はじきをしていたり、ぼうっと他のことを考えているようなお子さんが何人もいる。

「変わった子が多いから、いじめられた経験がある子がほとんどかもしれない」
 友人と語るといじめ体験がしばしば出るという。そんな息子も中学でいじめられた。けれど今の高校では誰もいじめないし、いじめの気配すら感じないという。

「いじめられたことがある子は、いじめようなんて思わなくなるんだよ」
 と息子は今の環境に安心しきっている。それは本当によかったと思うのだけど、妙にせつなくなった。

 息子は数学だけの男だけれど、他のお子さんたちは全科目で相当に優秀な偏差値をお持ちだと聞いている。そうしたお子さん達にいじめの経験率が高いのはどうしたことだろうか。

 息子は以前いた中学で、「皆と同じようになりなさい」と散々指導されていた。学校行事では気持ちをひとつにしなさい、と。一致団結が苦手な一匹狼の息子は逃げ出した。

 高校のクラスメイトたちもマイペースそうなお子さんが多い。集団生活というのは、こうした、ひとりの時間を大切にする若き秀才達の世界とは相容れないのかもしれない。

 授業の終わりに宿題のプリントが配られた。息子は最後から2番目だったのだが、息子の番でプリントが尽きた。息子は迷わず自分より後の子にプリントをあげた。するとそれを見ていた前の席の子が自分のプリントをサッと息子に渡してくれた。それを見ていた先生が追加のプリントを配りにいらした。息子が言っていた通りに、思いやりが教室に溢れていた。

 この学校ならば、このお子さん達はきっとだいじょうぶ。良い光景を参観できた、と私は微笑みながら息子を見つめた。息子は私の視線など気づかず、頭をぼりぼりかいていた......。


(更新 2011/6/23 )


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プロフィール

内藤みか(ないとう・みか)

 小説家、エッセイスト。山梨県出身。デビュー当時「ケータイ小説の女王」の異名をとリ、現在も電子書籍サイトのダウンロードランキング常連。「年下男恋愛」「イケメン」についてのコンテンツを作り続け、「イケメン評論家」としても活動。近年はイケメン恋愛ゲームのシナリオや、芝居の脚本も手がけるように。『夢をかなえるツイッター』などSNSに関する著作も。近著に『誰も教えてくれない Facebook & Twitter 100のルール』。twitterアカウントは @micanaitoh

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