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生命保険、0円。

文・内藤みか

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 最近、5年生の娘がしっかりしすぎている。
 春休みに4つのイラストコンクールに作品を応募したのだけれど、そこまでは今までの長期休みと大して違わない。違ったのは彼女のコンクールの選び方だった。

 まず、入賞したら何がもらえるかをチェックするようになった。そして現金もしくは金券がもらえるのであれば、おもむろに作品を作り始める。
 なので最近は賞品がもらえる子ども絵画コンクールよりも、確実に現金をいただけるマスコットキャラクターへの応募が多い。先日応募したのは1等が5万円のものだった。

 彼女は前からしっかりした子で、お年玉は毎年がっちり貯め続けて決して使わない。イケメンを見るとお財布がゆるゆるになり奢りまくってしまう私とは大違いだが、ケチな私の妹に気質がそっくりだ。妹は北海道旅行した際、ジンギスカンを食べたいと叫ぶ私に「そんな高いもの!」と決して応じなかった。彼女は一体何のために北海道に行ったのだろうと今でもうらめしく思い出す。

 そんなことはさておき、娘の小学校の保護者会が先日あった。教室の壁には「私の宝物」がそれぞれ貼り出されていた。見ると娘ったら宝物に「お母さん」と書いているではないか。目頭が熱くなる。母親になってよかったと思える一瞬だ。しかしその隣には不可解な言葉が並んでいる。
「げん金」「生命保健」(誤字があるけれど彼女が書いたまま転記)とある。
 今度は頬が熱くなった。

 家に帰ってきて話を聞くと、
「もしこれから地震があっても大丈夫なように」という。
 でも私は娘に生命保険をかけてはいない(ケガや入院の保障には入っているけれど)。それを説明しても「あらそう」と涼しい顔をしている。頭の中で彼女の意図を考えハッとした。母親の私は確かに生命保険に入っている。万一のことがあってはいけないからだ。ということは娘が書いた『生命保健』とは私の保険金のことだったのだ!

 つまり彼女の宝物である、「お母さん・現金・生命保険」とは、彼女が生きていくための収入源という意味なのである。あまりのクールさに涙が出そうになる私だった。


※キャラクター応募のために娘が試し書きしたイラスト(iPadの絵画アプリ使用)


(更新 2011/4/14 )


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プロフィール

内藤みか(ないとう・みか)

 小説家、エッセイスト。山梨県出身。デビュー当時「ケータイ小説の女王」の異名をとリ、現在も電子書籍サイトのダウンロードランキング常連。「年下男恋愛」「イケメン」についてのコンテンツを作り続け、「イケメン評論家」としても活動。近年はイケメン恋愛ゲームのシナリオや、芝居の脚本も手がけるように。『夢をかなえるツイッター』などSNSに関する著作も。近著に『誰も教えてくれない Facebook & Twitter 100のルール』。twitterアカウントは @micanaitoh

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