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電話代、1000円。

文・内藤みか

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 最近、私が困った時に颯爽と登場してくれる男の人がいる。恋人というわけではない。でも、ピンチの時にはヒラリと現れる。外にいるときは立体マスクをつけていて、それが似合うので私がつけた彼のあだなは「ガッチャマン」。ひとまわり以上も年下の、大きな瞳のイケメンさんだ。

 このガッチャマン、先日は、ドラマロケ地として借りたカフェを私がひとりで掃除していると言ったら、すっ飛んできて、ものすごい速さで店中のテーブルを拭いてくれた。飲食業でバイトをしていたので、掃除は慣れているという。

 このほかにも、息子の志望校を知ると、その学校の合格証書の画像をどこからか調達し、私に送信してくれた。こんなに尽くしてくれるし、毎週のようにご飯を食べたりお茶を飲んだりしているのだけど、私たちは手もつないだことがない。
 彼の話を友達にすると「絶対みかちゃんのことが好きなんだよ、その人」と言われるのだけど、でも確か以前、彼は「好きな人がいて何年も片思いなんだ」と言っていたはず。なので私も、好きになってはダメだとブレーキをかけている。

 そんなある日、私が出演したテレビの放映時間直前に、また彼は助けてくれた。実は私は、自分が出ているテレビを観るのは恥ずかしくて苦手だ。出演したくせに、いまだに録画を観ていない番組まであるほどだ。

 そのことを話すと、じゃあ僕が電話を通して一緒に観てあげようかと言ってくれた。喜ぶ私に「あ、でも......」と彼は口ごもった。
「あまり長くは話せないけど」
 私あての電話代がどうやら心配らしい。聞いてみると30分で1000円ほどかかるという。彼はその1000円すらも困るほどに生活に困っているらしい。とにかく話し相手が欲しかったので、私から彼のケータイに電話をかけるということで落ち着いた。そして彼は番組の最初から最後まで電話口でつきあってくれた。

 私のためにこんなに時間を割いてくれる人なんてここ数年いなかった。それは豪華なプレゼントよりもずっと尊いことのように思う。彼と恋愛関係になっていくかはわからないけれど、大切にしたい人であることは、間違いない。


(更新 2011/1/13 )


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プロフィール

内藤みか(ないとう・みか)

 小説家、エッセイスト。山梨県出身。デビュー当時「ケータイ小説の女王」の異名をとリ、現在も電子書籍サイトのダウンロードランキング常連。「年下男恋愛」「イケメン」についてのコンテンツを作り続け、「イケメン評論家」としても活動。近年はイケメン恋愛ゲームのシナリオや、芝居の脚本も手がけるように。『夢をかなえるツイッター』などSNSに関する著作も。近著に『誰も教えてくれない Facebook & Twitter 100のルール』。twitterアカウントは @micanaitoh

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